【いま注目の存在】ボルボの現在 そして未来 電動化への決意は揺るがず 前編

公開 : 2019.12.26 10:50  更新 : 2019.12.26 11:15

復活の立役者

当時の中国メーカーに対する評価を考えると、ジーリーホールディングによる買収はさらなる苦境をボルボにもたらすのではないかと恐れられたが、その代わりにジーリーホールディングは自らの言葉どおり、ボルボの経営に口出しするようなマネはしなかった。

ボルボに必要なサポートは与えるものの、あとは彼ら自身に任せることで、ジーリーホールディングはボルボをボルボたらしめることに成功したのだ。

サムエルソンがボルボ復活の立役者だ。
サムエルソンがボルボ復活の立役者だ。

ボルボ復活劇にとって大きかったのは、MANを率いていたホーカン・サムエルソンを2012年にCEOに招いたことだろう。スウェーデン人らしい落ち着きと、固い決意と見事なリーダーシップを兼ね備えた人物だ。

彼の戦略のもととなったのが、ジーリーホールディングのサポートがあるとは言え、フォルクスワーゲングループとは比べ物にならない、限られたリソースしか持たないというボルボの規模だった。

「優先順位を付ける必要がありました」とサムエルソンは言う。「すべてに対応することは出来ないので、選択が重要でした」

さらに、「われわれの強みはオープンな考え方にあります。小規模メーカーであるということは決して不利ではありません。もし巨大であれば、おそらくすべてが重要だと考えるメンバーが取締役のなかに沢山いるはずですが、そうすれば古い慣習を打ち破ることなど簡単にはできないでしょう」と彼は言う。

これまでのところ、十分な成果とともにサムエルソンの選択の正しさは証明されている。

クリエイティブな発想

ボルボはジーリーホールディングと共同で、2016年に登場したSUVモデルのXC90から始まる新世代のミッドサイズとラージサイズ向けプラットフォームであるスケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ(Scalable Product Architecture:SPA)を創り出している。

ジーリーホールディング傘下となって初めて登場したこの完全新設計モデルでは、ボルボの品質が損なわれるのではないかという懸念を払しょくすることにも成功している。

ボルボの現在 そして未来
ボルボの現在 そして未来

続いてボルボはコンパクトSUVのXC40を含む小型モデル向けにコンパクト・モジュラー・アーキテクチャ(Compact Modular Architecture:CMA)も生み出している。

重要なのは、この将来を見据えたCMAでは内燃機関と電動パワートレインの双方に対応しているということだ。

ボルボで技術部門トップを務めるヘンリク・グリーンは、これはフォルクスワーゲングループがMEBで実現したように、内燃機関向けとEV向けにそれぞれ別々のプラットフォームを創り出すようなマネは、ボルボには不可能だったからだと語っている。

つまり、はるかに少ないリソースで生き延びる術を活かしたということだ。「予算や時間が限られているからこそ、クリエイティブな発想が生まれるのです」と、ジーリーホールディングによる買収以前を思い返しつつグリーンは笑う。

ボルボも多くの主要な自動車メーカー同様、電動化や自動運転、販売方法のシフトといったトレンドに対応しているが、その決意と対応のスピードで自らを他社とは一線を画す存在だと見なしている。

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