気品漂う雰囲気が魅力 サンビーム・アルパイン UK版中古車ガイド(2) シリーズIIとVがベストバランス

公開 : 2025.06.15 17:50

素晴らしいパッケージングのロードスター、アルパイン 映画007初のボンドカーに採用 シリーズIIとVが最も高バランス 気品漂う雰囲気 ライバルを凌駕する快適性 UK編集部が魅力を再確認

シリーズIIとVが最も魅力的なバランス

サンビームアルパインは、シリーズIからVまで動力性能は殆ど変化しなかった。アルパイン・シリーズIVのAT仕様や、シリーズIIIのGT仕様は他より遅く、エンジン交換やチューニングは一般的。最も魅力的なバランスにあるのは、シリーズIIとVだろう。

ツイン・ウェーバーキャブレター化や、ホルベイ仕様のチューニングエンジンへの換装は、新車時代に人気だったアップグレード。他方、低出力のサンビーム・レイピア用エンジンが載っていることもある。

サンビーム・アルパイン(1959〜1968年/英国仕様)
サンビーム・アルパイン(1959〜1968年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

エンジンは無鉛ガソリンに耐えるものの、内部の劣化が進んでいると、ガスケットが割れたりアルミ製ヘッドが破損することも。試乗時はソフトトップを閉めるか、ある場合はハードトップを被せたい。エンジンやトランスミッションの異音へ気付きやすい。

オーバーヒート傾向がないか確かめるには、15km以上は走りたい。その後停止し、エンジンをしばらく回しておくと、兆候をうかがえる。

気品漂う雰囲気 ライバルを凌駕する快適性

4速MTにはオプションでオーバードライブを指定でき、高速道路での走りに大きな違いを与えた。ギア比やアクスル比は、シリーズやオーバードライブの有無で異なる。オールシンクロにオーバードライブ付きのシリーズV用ユニットが、ベストといえる。

ステアリングの精度はそこまで優れないが、滑らかに操れる。過度に重くないか、遊びが大きくないか、試乗でじっくり吟味したい。

サンビーム・アルパイン(1959〜1968年/英国仕様)
サンビーム・アルパイン(1959〜1968年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

テールフィンが控えめに伸びたスタイリングは、ケネス・ハウズ氏。ロング&ローなプロポーションに仕上がっている。ドアは大きく乗り降りしやすく、サイドへ回り込んだフロントガラスは、ロードスターとして当時の競合を凌駕する快適性に貢献している。

MGAやMGB、トライアンフTRシリーズに並ぶ性能は備わらずとも、気品漂う雰囲気が大きな魅力。ボディは耐久性が高く、長距離ドライブでの疲労も控えめ。天候に左右される可能性も低い。理想的な、ブリティッシュ・クラシックスポーツの1台だ。

購入時に気をつけたいポイント

ボディとシャシー

ヘッドライト周辺や前後のフェンダー、ホイールアーチの内側、フロントガラスの付け根、フロントピラー、サイドシル、ジャッキアップポイントなどが錆びやすいポイント。シャシーのアウトリガーやドアの底部など、見えにくい部分にも要注意。

フロアパネルや荷室の床回り、バッテリーボックス、リアのサスペンション・スプリングマウントなども錆びがち。ハードトップやバランスパネルの状態も観察したい。片側をジャッキアップして、ドアの位置が明らかにずれないか、たわみ具合も確かめる。

サンビーム・アルパイン(1959〜1968年/英国仕様)
サンビーム・アルパイン(1959〜1968年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

ソフトトップは、状態が良ければきれいに開閉できるが、作業は少し難しい。

エンジン

スチール製ブロックにアルミ製ヘッドが載る4気筒エンジンは、10万kmから16万km毎にリビルドが必要。ノッキング音や過度なオイル消費がないか確かめたい。キャブレターをリフレッシュする部品は、まだ入手しやすい。

基本的にエンジンはメンテナンスが容易で、力強い。シリーズIIIではエアフィルターボックスは備わらず、性能が振るわなかった。シリーズVの吸気回りは、パンケーキのよう。

冷却系

初期のアルパインには、独立したヘッダータンクを備えたクロスフロー・ラジエターが組まれていた。内部に堆積物が溜まりやすい。

アルミ製シリンダーヘッドの腐食により、クーラントの経路が詰まりがち。ヘッド付近からの漏れや、オーバーヒートの兆候がないか確かめたい。オイルフィラーキャップを開いて、乳化したオイルが付着していないかも観察したい。

トランスミッション

過去にトランスミッションが交換された可能性は、ゼロではない。オリジナルか、互換性に優れたユニットが組まれているか確認する。変速が滑らかか、異音がないかも確かめたい。クラッチの滑りやシンクロメッシュの劣化、走行中のギア抜けにも要注意。

サスペンションとブレーキ

リアスプリングは劣化しがち。ジョイントやブッシュ類は摩耗しがち。1964年式までは、定期的なグリスアップが必要とされた。

ブレーキは、長く保管されていた車両などで固着しがち。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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