【マツダの戦略は?】EV航続距離のジレンマ コストや環境負荷、性能に影響も

公開 : 2020.10.21 11:17

電気自動車(EV)では航続距離が重視されがちですが、大型バッテリーを搭載することによるデメリットは多く、ジレンマに直面しています。消費者は長距離を走れるEVを望んでいますが、環境面の負荷は増えてしまいます。

航続距離と環境性能のジレンマ

text:James Attwood(ジェームズ・アトウッド)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

近年のEV技術の飛躍的な進歩にもかかわらず、航続距離の不安は依然として問題となっている。

例えば、英国の運輸研究所(TRL)が昨年行った調査では、航続距離が320kmの場合、メインカーとしてEVを検討する消費者は50%に過ぎなかったが、航続距離が480kmまで伸びた場合は90%にまで上昇した。

マツダMX-30
マツダMX-30    マツダ

これは、ヒュンダイ・コナ、ジャガーIペイステスラモデル3など、航続距離が480km前後、またそれ以上のモデルの成功を示している。

しかし、航続距離を伸ばすためにリチウムイオンバッテリーを増設すると、購入コストがかさみ、増えた重量は車両の動的性能に影響を与え、電費を悪化させる。

さらに、バッテリーの増設によりEVの生産時に発生するCO2が増加し、環境面におけるEVのメリットを損なうことになる。

現在、一部の自動車メーカーは、バッテリー大型化の流れに逆行し始めている。

マツダは最近、初の市販EVであるMX-30を発売した。航続距離はライバルの電動SUVに比べて短いが、欧州の研究開発責任者であるヨアヒム・クンツは、「ジャストサイズ」というコンセプトを念頭に置いて開発したと述べている。

「環境と運転の楽しさという2つの観点から、バッテリーが非常に大きく、クルマが大きくて重いというのは、将来的には正しい方向性ではないと考えています」

また、マツダは自動車が作られてから廃車になるまでに排出されたCO2の総量を示す「ウェル・ツー・ホイール」排出量の削減に力を入れていることにも言及した。

「バッテリーの生産には、材料の採取や生産に伴うCO2排出量が非常に多いのです。バッテリーが小さければ排出量が減り、軽量化されるため使用時のエネルギー消費量も少なくて済みます」

マツダは顧客の使用状況を調査し、生産時や走行時のCO2排出量とのバランスを取りながら、MX-30の航続距離を決定した。

クンツは、「平日は自宅で充電するのが一般的な使い方だと思いますが、長距離の移動であれば、次の公共の充電ステーションまでの航続距離で十分だと考えています」と述べている。

マツダは英国などの市場で、小型ロータリーエンジンを搭載したMX-30のレンジエクステンダー・バージョンを開発している。

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