【インド横断2700km】58年前のヒンドスタン・アンバサダー 予想外に楽しいドライブ 前編

公開 : 2020.11.07 07:20  更新 : 2020.12.08 08:40

スペアパーツを持ってインド入り

アンバサダーが見つからないまま、数か月が経過。しかしプレムは、ついに1962年式の状態の良いクルマを発見。メカニズムや構造に問題がないことを確認し、即決した。ブレーキや電気系統など細かな部分は、後の修理でどうにかなると考えた。

プレムへ支払った金額は、3300ポンド(44万円)。コジコードの町にアンバサダーが届けられた。しかしクルマを筆者名義に改め、公道を走れる状態にするのにも手間取った。

ヒンドスタン・アンバサダーMkIの修理の様子
ヒンドスタン・アンバサダーMkIの修理の様子

インドの事務手続きは古い慣習のままで、長く待たされることも当たり前。プレムは6週間にも渡って、保守的な担当者とのやり取りを重ね、すべてを成し遂げてくれた。彼はインドのヒーローだ。

エドと筆者は工具やスペアパーツなどをスーツケースに詰め込んで、ロンドン・ヒースロー空港へ向かった。アンバサダーの部品は、インドでは入手が難しいらしい。

部品は、車種を問わない共通部品のほか、プレムが送ってくれた写真をもとに、推測して選んだ。モーリス・オックスフォードのガスケットとウオーターポンプ、ファンベルト、ブレーキのリビルトキット、オイルフィルター、冷却システムなど。

アンバサダーに合うと思われる、トランスミッションの部品やディストリビューター、キャブレターのリビルトキットも。燃料ポンプは、モーリス・マリーナ用を用意した。

コジコードの町に着き、空港からホテルまで運んでくれたのは、アンバサダーMkIVのタクシー。素晴らしい体験だった。ホテルの駐車場は広く、日陰の下でアンバサダーの修理ができる。

ホテルの駐車場で重点的な点検・整備

われわれのアンバサダーは、翌朝ホテルへやってきた。素晴らしい光景だった。

穏やかに暮らしていたわけではなさそうだが、品位ある姿を保っている。ボディは古びているが艶が残っている。一見すると、メカの状態も悪くない。

ヒンドスタン・アンバサダーMkI(1957年〜1962年)
ヒンドスタン・アンバサダーMkI(1957年〜1962年)

誕生から約60年が過ぎているが、適切な修理や整備を定期的に受けてきた様子。重点的なレストアは、受けていないようだ。

スミス製のオドメーターは、9万9999マイル(16万km)を何度か過ぎている。つなぎを着て、作業を始める。

手始めにカムシャフト・タイミングを確認し、バルブクリアランスを修正。ガスケットも交換した。エンジンオイルは、イカ墨のように真っ黒だ。

ディストリビューターを分解すると、英国では見たことがないほど摩耗していた。英国から持ってきた部品は、そのまま付いた。点火タイミングを調整し、コイルとケーブル、点火プラグを交換する。

冷却系は一度内部を洗浄し、サーモスタットやホース類など一式を交換。ラジエター上部が割れかけていたため、エポキシパでてとりあえず塞ぐ。

キャブレターやエアフィルタ、燃料タンクやホースなども一新。配管途中に燃料フィルタを追加した。ココナッツの皮から作られた、ヒートシールドも直した。

ホテルのスタッフや通行人は、われわれの作業を楽しそうに眺めていた。中には立ち止まって状態を聞き、アドバイスしてくれる人も。彼らの父も、アンバサダーを所有していたらしい。

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