【復活を夢見たエラン】ビーガンチューン・エバンテ140 TC オリジナルのツインカム 前編

公開 : 2021.03.13 07:05

日本向けツインカム・ユニットを製造

翌年、サリー州のケーターハムでは21台のセブンが作られた。レース用に組まれたシャシー番号7にはアルファ・ロメオ製エンジンが載っていたが、残りはロータス・ツインカム・ユニットが搭載された。

一方で、ロータス製ツインカムも古さを隠せなくなっていた。契約上、ロータスはケーターハムをサポートする義務があり、ツインカム・エンジンのチューニングで名を馳せていたビーガンチューン社が浮上する。

ビーガンチューン・エバンテ140 TC(1987-1993年)
ビーガンチューン・エバンテ140 TC(1987-1993年)

1975年にケーターハムと提携したビーガンチューンは、日本市場向けのケーターハム・セブン用として、エンジンの製造を始める。3年間で約300基のロータス・ツインカムが組み立てられ、一般道を走るパワーソースとなった。

しかし1978年、古くなったツインカム・ユニットの製造は終了。ケーターハムは多くの注文を抱えており、セブンの供給を止めるわけにはいかなかった。そこで、フォード製4気筒エンジンへの切り替えを決定する。

ロビンソンは大幅な改良を加え、ビーガンチューン・タイプA(VTA)と呼ばれるエンジンを完成させた。225E型トールブロックというケント・ユニットがベースで、排気量は1598cc。独自設計のシリンダーヘッドが組み合わされた。

コスワース社製のBDAユニットなど、当時の優れたツインカム・エンジンから発想を得た鋳造構造が特長。ロータス・ユニットの抱えていた問題の多くも、解決されていた。

フォード・ユニットがベースのVTA

外観上の大きな違いは、タイミングチェーンだったものが、露出したタイミングベルトへ変更されているところ。吸気ポートやバルブ、冷却系やオイルの潤滑系統など、内部構造にも様々な改良が施されていた。

2基のデロルト社製40DHLAキャブレターが組まれ、標準状態で142psを獲得。ハイリフト・カムと大径ポートに交換し、圧縮比を8.5:1から10.5:1へ高めることで、さらに20psを引き出すことも可能だった。

ビーガンチューン・エバンテ140 TC(1987-1993年)
ビーガンチューン・エバンテ140 TC(1987-1993年)

後期仕様では、排気量が1699ccへ拡大。最高出力は変わらなかったもののトルクが太くなり、柔軟性を高めていた。

優れたパフォーマンスを備えていたが、VTAユニットは信頼性に課題があった。品質管理はロータス水準には及ばず、多くのエンジンが問題を抱えビーガンチューンのワークショップに残った。

1983年になると、同等のパワーを発揮し信頼性で勝るコスワースBDRユニットが登場。1700スーパースプリントとしてセブンに搭載されると、VTAの需要は下がり始めた。といっても、決して当初から数は多くなかった。

最終的にVTAユニットを搭載したケーターハムが作られたのは、40台程度。しかしロビンソンは、その中に可能性を見出す。ツインカム・エンジンを改良したようにエランをチューニングし、VTAにピッタリのモデルを生み出したらどうか、と。

ロビンソンは、VTAの開発を始めた当初から、独自モデルの製造にも関心を寄せていた。ロータス・エランの改良で、彼ほど適任だった人物もいなかっただろう。そうして誕生したのが、このエバンテだ。

この続きは後編にて。

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