【おかわり問題ってなに?】EVで四国遍路 8000km走破/88回充電で感じた3つの課題

公開 : 2021.05.06 05:45  更新 : 2021.10.20 17:32

「おかわり充電」SNSで話題のマナー問題

「おかわり充電」とは、1回30分が充電時間の上限となる急速充電スタンドで、2回以上繰り返して充電をすることで、正式な名称ではなくSNSなどでEVユーザーが投稿に使用することば、ハッシュタグで使用されている。

SNSを見ると、充電待ちがいるにもかかわらず「おかわり充電」をする人への不満や、おかわり充電そのものを否定する意見が散見される。

EVの充電の様子
EVの充電の様子    シャッターストック

筆者は試乗中に、充電の度にそのレポートをSNSに投稿していたのだが、おかわり充電をしたことについて、批判的なコメントが寄せられたことがあった。

制度上、急速充電スタンドで繰り返して充電してはいけない、という規則はないのだが、一般的な道徳上、誰かが充電を待っているのに、順番を譲らず充電をするのは明らかなマナー違反である。

ただ、このマナー違反についてだけを問題点とするなら、本記事でわざわざ見出しにしてまで書く必要はなかった。

筆者が危惧するのは、SNS上で自警団的に「おかわり充電」を悪として弾劾するような風潮や、一部の熱狂的なEVファンの間で醸成される意味不明なルールやマナーができるではないか、という点である。

状況が許せば、おかわり充電をしても問題はないはずだ。

おかわり充電をしている間は、充電スタンドから離れず、そこにやってくるEVがいないかどうか注意を払い、充電する車が来るようであれば、途中で充電を停止して譲ってあげれば問題ない。

これに対して「先に充電しているEVがいたら、遠慮して離れた場所で待つ人もいる」というような意見もあるが、これをいい出したらキリがなくなる。

インフラが整うまでは、EVユーザー同士でコミュニケーションを取るしかない。

充電スタンドでの順番待ちは、アプリで充電予約ができるようにするなど、インフラ整備で解決できるとは思う。

EVスタンドでは、充電カードがセンターと通信して認証しているので、システム連携すれば実現可能だろう。

また、外にある充電スタンドを使わないでも済むスペックのEVが普及すれば、この問題の解決に向かう、とも考えるが、まだ未来予想図の範疇をこえないだろう。

いずれにしても、おかわり充電問題の解決策より、先に解決しなければならない問題や課題が多いだろう。

そもそも、現時点、問題点が洗い出されたという雰囲気もない。

EV充電に関する勘違いとリテラシー問題

「容量の大きいバッテリーを積んだEVなら、充電スタンドでたくさん充電できる」と思っていた人が何人かいた。

都度、「めちゃくちゃ遅いポンプでガソリンを給油したら、高性能なクルマでも軽自動車でも、同じ量のガソリンを入れるなら等しくめちゃくちゃ時間がかかりますよね」などと極力わかりやすさをこころがけて説明するのだが、半数くらいの人から「EVってめんどさい」と言われて会話が終了した。

左が90kW出力、右が44kW出力
左が90kW出力、右が44kW出力    宇野 智

急速充電スタンドでは、どんな車種でも100%フル充電できると思っている人も少なくなかった。

ガソリンスタンドで簡単に満タンにできるのと同じ概念である。

充電スタンドによっては、90kW出力と50kWないし44kW出力の異なる充電設備を複数備えたところがある。EVオーナーの全員が、自分のクルマがどちらの充電設備に対応しているのか、きちんと把握できているのかどうかも疑問である。

このような勘違いをする人や知らない人が悪いのではない。EVに乗るなら、それくらいあらかじめ勉強しておけよ、と言うのもわからなくもないが、国策として自動車の電動化を進めるのであれば、EVについての基礎的な知識を学ぶ場を、自動車教習所のカリキュラムに組み込むとか、免許更新時の教習に組み込むなどしていかないといけないのではなかろうか?

前述した、おかわり充電などのマナーアップについての啓蒙もできるだろう。

クルマの電動化は、単にパワートレインがエンジンからモーターに変わるだけは済まされない、さまざまな課題がある。

この課題に一部の人だけが取り組んでいては、近い将来の自分たちの移動手段が幸せなカタチにならないだろう。

「電動化の問題点」のみにフォーカスしたの記事タイトルでは、この問題に興味関心をもつ方にしか読まれないだろう。

「EVで充電〇回」、「四国遍路で〇km走破」とすれば、身体を張った長距離ドライブのようになり(実際に身体を張っているのだが)より広い層に興味を持ってくれるのではないか、という目論見で企画、レポートをおこなった。

はたして、その目論見どおりになったのだろうか? 1人でも多くの人が、自動車の電動化、環境・資源問題、SDGsに関心を持っていただければ幸いである。

記事に関わった人々

  • 宇野智

    Satoru Uno

    1974年生まれ。前職はSE兼営業で副業が物書き。自動車ウェブメディア編集長を経て、2021年2月からフリー。現在の基礎はカタログ少年時代、食事中はTVを見るより諸元表を見ていたことに始まる。陸海空の乗り物全般と猫とカメラとガジェットをこよなく愛する。取材/執筆/撮影/編集はもはやライフワークに。結果、キャパオーバーで自爆すること多数。

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