メルセデス・ベンツEQB 350へ試乗 7シーターが○ 銘柄として物足りない部分も

公開 : 2022.01.07 08:25

良好なレスポンスと視界で運転しやすい

EQBを発進させてみると、印象が薄いものの、とても滑らかに加速していく。7シーターの電動SUVに求めるものとして、まったく不満は感じないだろう。

ドライバーが得られる充足感では、やはりマスタング・マッハEの方が勝る。感触の良いステアリング・フィールで操る楽しさがあるし、シャシーバランスも良好。日常的に味わえるクルマとの一体感という点で、より考えられているように思う。

メルセデス・ベンツEQB 350 4マテック(欧州仕様)
メルセデス・ベンツEQB 350 4マテック(欧州仕様)

それでも、EQBの操作に対するレスポンスは良好で、運転はしやすい。ひたひたと路面を掴んで進んでくれる。運転姿勢は起き気味のコマンドポジションだから、視界も優れる。

車両前方の交通状態や交差点の有無などを判断し、予測的に回生ブレーキの強さを制御するシステムも効果的。良く機能し、速度制御をしやすいと感じた。ステアリングホイールにパドルが付き、回生ブレーキの強さを手動で調整することも可能だ。

一方で、完全な惰性走行は選べない。多くのドライバーが求めるものだと思うのだが。

サスペンションのダンパーは、2段階に減衰力を調整できる。ソフトな方を選ぶと、長周期での穏やかな乗り心地に浸れるが、ホイールの動きには少し粗さもある様子。舗装が荒れた区間では、少し振動が目立ってしまう。

メルセデス・ベンツには、もう少し上の洗練性を期待するはず。エディション1が履く20インチ・ホイールが足を引っ張っているのだと思うものの、同社のEQB以外の純EVでも感取されたものだから、MFAプラットフォーム固有の弱点なのかもしれない。

最大の強みは7シーターという実用性

インテリアはラグジュアリーで居心地が良い。素材の肌触りも心地良い。大きなタッチモニターには、目的地に到着した時点でのバッテリーの予想残量など、純EVならではの情報も表示してくれる。

車内空間は、2列目シートのフロアが少し持ち上げられている。足もと空間は広い反面、座面が少し低く感じられてしまう。フロントシートの座り心地は、長距離でも疲れ知らずのCクラスには届いていない。ライバルと座り比べてみると良いだろう。

メルセデス・ベンツEQB 350 4マテック(欧州仕様)
メルセデス・ベンツEQB 350 4マテック(欧州仕様)

EQB最大の強みは、7シーターというレイアウトにあるといえそうだ。それ以外の実力は、このクラスの純EV SUVとしては平均点程度。航続距離は物足りないし、コストパフォーマンスも高いとはいえない。

プレミアムブランドのメルセデス・ベンツとして、平均点では納得できないというユーザーもいると思う。だが、補助席的だとしても3列目のシートを重要視するなら、EQBを選んで後悔することはないだろう。

メルセデス・ベンツEQB 350 4マテック(欧州仕様)のスペック

英国価格:5万3645ポンド(約815万円)
全長:4684mm
全幅:1834mm
全高:1667mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:6.0秒
航続距離:413km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2030kg
パワートレイン:AC同期モーター+AC非同期モーター
バッテリー:66.5kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:292ps(システム総合)
最大トルク:52.8kg-m(システム総合)
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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