ブガッティ vs ケーニグセグ

ブガッティのハイパーカー、ヴェイロンは、2010年に430km/hのスピードの壁を破り、世界最速の市販車に認定された。ケーニグセグは2017年、米ネバダ州道160号線の約18kmの閉鎖区間において、アゲーラRSで447km/hを記録。ヴェイロンを打ち破った。

ブガッティはこの攻勢を見過ごすわけにいかず、アゲーラを難なく粉砕できるシロンの開発に着手する。そして2019年、勇敢なテストドライバーのアンディ・ウォレスがハンドルを握るシロン・スーパースポーツ300+は、現時点でも最高記録となる489km/hに到達。ブガッティは、市販車で480km/hを超えた最初の自動車メーカーとなった。その後、同社は最高速度競争から身を引き、別のプロジェクトに注力している。

ケーニグセグ・ジェスコ・アブソリュート
ケーニグセグ・ジェスコ・アブソリュート

ケーニグセグは2020年、ジェスコを発展させたアブソリュートを発表。コンピューターシミュレーションでは530km/hに到達できるとのことだが、現実世界でテストする場所はまだ見つかっていない。あるとすれば、8km以上の長い直線をもつエーラ=レッシエンだが、ブガッティの親分であるフォルクスワーゲンの所有なので、借りることはできないかもしれない。また、ケーニグセグは、ブガッティから王座を奪えるかどうかにかかわらず、最高速度の追求は終えると述べている。

キャデラック vs リンカーン

米国の有名高級車ブランドは、裕福なドライバーや政府高官の財布をめぐって争っている。リンカーンは、何十年にもわたって合衆国大統領を乗せてきたが、ホワイトハウスが1984年に防弾仕様のキャデラックに乗り換えて以来、ほとんど使われていない。

いずれにせよ、国家元首とその側近を輸送するだけでは健全な経営状態を保つことはできず、1980年代から1990年代にかけて両ブランドのイメージは低下する。フォードは後に、2008年の金融危機をきっかけにリンカーンブランドをほぼ閉鎖したことを認めている。

キャデラック・エスカレード
キャデラック・エスカレード

現在、両ブランドはいかにも高級車らしい製品を作ることで、ゆっくりと、しかし確実に息を吹き返しつつある。欧州のライバルを模倣するのではなく、独自のイメージを打ち立てようとしている。

フェラーリ vs フォード

フォードとフェラーリのライバル関係は、映画『フォードvsフェラーリ(原題:Ford v Ferrari)』で楽しみながら学ぶことができる。事実に基づいた映画なので、これから語ることをネタバレと怒らないでほしいところだが、まっさらな状態で作品を楽しみたい人は、どうかスクロールして次の項目へ。VODなりブルーレイなりで鑑賞後、この記事へ戻ってきていただけると幸いだ。

フォードは1960年代初頭、当時独立企業だったフェラーリを買収しようとしたが、交渉が行き詰まり、代表団は手ぶらでミシガンに戻ってきた。そこで経営陣は、レースでフェラーリを打ち負かし、見返してやるために、徹底的なキャンペーンを展開する。はじめの数回はチャレンジに失敗するが、1966年、キャロル・シェルビー(1923-2012)の協力のもと、ついに優勝を果たした。1967年、1968年、1969年にも優勝。まさにブルーカラー対ホワイトカラーの戦いであった。

フォードが優勝した1966年のル・マン
フォードが優勝した1966年のル・マン

フォードは2015年にル・マンを制したGT40をモチーフに、新型GTを発売。翌年のル・マン24時間レースへの参戦計画を発表すると、思わぬ形でライバル関係を再燃させることになった。そのGTE-Pro仕様のGTは、フェラーリの488 GTEを僅差で下し、クラス1位を獲得したのである(総合1位はポルシェ919ハイブリッド)。トロフィーに満足したフォードは、2019年シーズンをもって、ファクトリーが支援する耐久レースプログラムを終了。2022年末には、現行モデルのGTも生産終了となる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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