指定取消のビッグモーター熊本浜線店「車検不正」の実態 「58台どころじゃない、1000台超えてますよ」元整備責任者が証言

公開 : 2023.05.11 17:45  更新 : 2023.07.19 11:56

車検のノルマは前年同月の台数以上

手間のかかる作業はしない。その背景には「異常な数の車検入庫台数」がある。

「車検のノルマは前年同月の台数を超えることで熊本浜線店では多いときで月に200台以上の車検入庫がありましたが、車検に対応できる整備スタッフは5〜6名程度で検査員は1〜2名。検査ラインは1つです」

九州運輸局熊本運輸支局
九州運輸局熊本運輸支局

「1日9~10台の車検をおこなうため時間や手間のかかる作業や検査はやらないことが当たり前でした。もちろん、書類には検査がされたとして記入していました」

検査員の資格を持ってない整備士が書類に記入することも多く、指定工場では禁止されている「前検査・後整備」も普通におこなわれていたという。

これはどういうことか?

「指定工場では整備を先におこなってから車検を通す、いわゆる『前整備・後検査』しか認められていません」

「それが、ビッグモーターでは、例えば6月のノルマ台数が達成できそうにない場合、7月に車検が予定されているクルマの車検を先に『別のクルマで』6月末までに通して(いわゆるペーパー車検)、7月に入ってお客さんに予定通りクルマを持ってきてもらって車検整備をおこなっていました……」

「前検査・後整備はもちろんぺーパー車検も重大な禁止行為ですが、そうすることでノルマを達成していた実態もあります」

前整備(24か月点検)→後検査(車検)とは?

ディーラーや整備工場、車検代行業者へ車検を依頼する場合は車検と24か月点検費用が必ずセットでおこなわれる。

つまり、前整備(24か月点検)→後検査(車検)以外は認められない。

いっぽう、24か月点検整備をおこなわずに車検を受け、後から点検整備をおこなうことを前検査→後整備と呼び、ユーザー車検の場合はこれが許可される。

ビッグモーターのような指定工場が「前検査→後整備」をおこなうことは法律的にもNGとなる。

車検不正が発覚したクルマはどうなる?

改めて国交省九州運輸局のニュースリリースを見てみよう。

ビッグモーター熊本浜線店が指定の取り消しを受けた違反理由は以下だ。

1
道路運送車両法第94条の3第1項違反(法令の規定を遵守する体制でない)

2
道路運送車両法第94条の5第1項違反(故意により検査の一部を実施せず適合証を交付した)

3
道路運送車両法第94条の6第1項違反(指定整備記録簿の虚偽記載)

4
道路運送車両法第94条の6第1項違反(指定整備記録簿の一部記載漏れ、記載誤り)

5
道路運送車両法第94条の5第4項違反(検査員が検査していないにもかかわらず適合証に証明した)

この中で「速度計の誤差測定をしなかった58台」については2と3に相当する。

気になるのはこれら58台の「その後」だ。保安基準に適合していないため再度の検査が必要になると思われるが……。ビッグモーターではない神奈川県内の民間車検場に聞いてみた。

「オーナーの元に運輸支局より再検査の旨を記載したはがきが届きます。そこで、オーナーが車検をおこなったビッグモーターに問い合わせるという流れになるでしょう。費用の負担や代車を出すなどの話は個別に担当者と話すことになると思います」

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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