819psの素晴らしい処女作 ルーシッド・エアでニューヨークを走る 衝撃的な速さ 後編

公開 : 2023.06.03 09:46

Sクラスを彷彿とさせる最高レベルの快適さ

試乗したエアが履いていたホイールは19インチ。タイヤサイズは245/45と、選択肢では肉厚な方だった。航続距離だけでなく、乗り心地にもプラスに働く。最大で21インチまで選べる。

特に路面からの入力の処理は優秀で、ベアマウンテン州立公園の傷んだアスファルトでも、明確な衝撃が伝わることはほぼナシ。ダブルウイッシュボーン式に、コイルスプリングとアダプティブダンパーというサスペンションが、良い仕事をするようだ。

ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)
ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)

郊外のハイウェイは、エアが最も得意とする区間。最高レベルの快適さに身を置き、高速で静かに移動できる。V12エンジンを搭載していた、メルセデス・ベンツSクラスを彷彿とさせる。ちなみに、エアサスペンションも開発中とのこと。

航続距離も充分に長い。渋滞したマンハッタンを走り、かなりのハイペースで州立公園も駆け抜けたが、320kmを走り終えた時点で駆動用バッテリーの残量は50%だった。BEVにとってエネルギー効率は重要な性能だが、ルーシッドの技術力は優位といえる。

リアシート側の空間はSクラス並みで、サルーンとしての実用性も高い。駆動用バッテリーが88kWhへ小さくなるエントリーグレードのエア・ピュアなら、さらにゆとりが生まれるという。ボンネットが短い、パッケージングが活きている。

荷室も大きく、リアシートを倒せば7フィート(約2133mm)のサーフボードを詰めるとか。フロント側にも収納が設けられている。

見事に報われたルーシッドの努力

日常的に乗りやすい、高級サルーンかつ高性能グランドツアラーを目指したルーシッドの努力は、報われたように思う。革新的で高効率なBEVとして、エアは素晴らしい処女作に仕上がっている。有利に戦える水準にすら達していると思う。

このクラスのモデルは、電動パワートレインとの相性に優れる。新興ブランドとして、実力の高さを数字で誇示し、注目を集める必要性があったことも理解できる。同社は、この方向性を一層磨いていくべきだろう。

ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)
ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)

惜しまれるのは、右ハンドル仕様のエアをルーシッドが計画していないこと。メカニズム的には、内燃エンジンのモデルほど難しくないはずだが。

既に欧州はBEVに対する関心が高く、多様なモデルを受け入れ態勢が整いつつある。近い将来、ロンドンのウェストミンスター橋を渡るエアを、見れる日が来るかもしれない。

撮影:マイク・カトラー(Mike Culter)

ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)のスペック

北米価格:13万8000ドル(約1904万円)
全長:4976mm
全幅:1939mm
全高:1410mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:3.0秒
航続距離:830km(EPA値)
電費:7.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2360kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:112kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:819ps
最大トルク:122.1kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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