走りも往年を彷彿 ポルシェ911 スポーツクラシックへ試乗 ターボ+カレラGTS 限定1250台

公開 : 2023.06.17 08:25

英国の公道では適正値といえる61.1kg-m

4.0Lフラット6に並ぶパワフルさはないものの、通常のカレラの3.0Lユニットとは異なる活発さが爽快。回転数の高まりに応じて、吸気音も強まる。加速時には僅かなターボラグも感取されるが、個性を深める特徴として、否定するものではない。

1570kgの車重を引っ張る61.1kg-mという最大トルクは、英国の公道で絶妙。2速でアクセルペダルを蹴飛ばすのを躊躇させるほど強力ではなく、カーブで荷重移動させつつ、右足の加減でラインを制御するのに丁度いい。

ポルシェ911 スポーツクラシック(英国仕様)
ポルシェ911 スポーツクラシック(英国仕様)

姿勢制御は従来どおりタイト。しっかり引き締まりつつ、厳しいわけではない。波打つような舗装状態でも、溶けたバターの上を滑るようなスムーズさが伴う。数世代前の、911 GT3にも似ている。

911 スポーツクラシックを知るほど、懐の深さへ惹き込まれてしまう。望外なほど従順に扱える。

唯一、若干気になったのが7速MT。シフトレバーの動きには適度なスプリング感があり、上段は長距離ツーリングに最適なレシオに設定されている。しかし、リンクの感触にはもう少しダイレクト感があって良いだろう。

GT3 ツーリングと比較して、ロードノイズも小さくはない。現行の911全体にいえることだが。

特別なスタイルだけではない運転体験の魅力

見た目では、好き嫌いが分かれるかもしれない。フックス社製のアルミホイールは、クラシカルなデザインではあるが、デザインスケッチのように大径。エンブレムはゴールドに染められ、インテリアは千鳥格子模様のテキスタイルで仕立てられている。

モニター式メーターパネルに描かれる、グリーンのレブカウンターは好ましい。1964年式の911を彷彿とし、眺めているだけで満たされる。

ポルシェ911 スポーツクラシック(英国仕様)
ポルシェ911 スポーツクラシック(英国仕様)

後ろ姿は、往年のカレラ2.7 RSをイメージさせる、ダックテール・スポイラーで差別化。911 ターボに備わるボディサイドのエアインテークは埋められ、ラムエア・インテークが内蔵されている。

ステアリングホイールを握った瞬間に、昔ながらの911を想起させるドライビング体験へ惹き込まれる。911 スポーツクラシックの魅力は、特別なスタイルだけではない。

丁寧にオプションを厳選した911 カレラSでも、近い体験は得られるかもしれない。それでも、唯一無二な仕上がりにある992型であることは間違いないだろう。

ポルシェ911 スポーツクラシック(英国仕様)のスペック

英国価格:21万7727ポンド(約3505万円/試乗車)
全長:4535mm
全幅:1900mm
全高:1303mm
最高速度:315km/h
0-100km/h加速:4.1秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:236g/km
乾燥重量:1570kg
パワートレイン:水平対向6気筒3745ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:550ps/6750rpm
最大トルク:61.1kg-m/2000-6000rpm
ギアボックス:7速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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