走りも往年を彷彿 ポルシェ911 スポーツクラシックへ試乗 ターボ+カレラGTS 限定1250台

公開 : 2023.06.17 08:25

1970年代のレーサーをオマージュした、限定の特別仕様。見た目だけでなく、走りも往年を彷彿させると英国編集部は評価します。

911ターボをベースに550psへデチューン

今回、英国の一般道で試乗したのは、ポルシェ911 スポーツクラシック。1250台の限定とはいえ、往年のレーシングカーを彷彿とさせるディティールを除いて、基本的には従来の992型と大きくは違わない。しかし、あえてレポートしたくなる魅力がある。

ベースとなったのは、3.8L水平対向6気筒のツインターボ・エンジンを積んだ、911 ターボ。ただし、最高出力は580psから550psへデチューンされている。最大トルクも61.1kg-mへ、15.1kg-mも抑えられている。

ポルシェ911 スポーツクラシック(英国仕様)
ポルシェ911 スポーツクラシック(英国仕様)

それでいて、英国価格は21万4200ポンド(約3448万円)から。そもそもお高い911 ターボに、718ボクスターを加えた金額以上となっている。

ポルシェのGT部門が手を施した、特別な911ではない。金額で接近する911 GT3が獲得した、ダブルウイッシュボーン式のフロント・サスペンションは備わらない。前述の通り、9000rpmまで回る4.0Lエンジンが載っているわけでもない。

手掛けたのは、ポルシェ・エクスクルーシブ・マニュファクトゥール。自らスタイリングを中心に展開すると主張する、オーダーメイド部門となる。

マニュアルとなる7速トランスミッションとサスペンションも、従来の911に搭載されてきたもの。カレラSに充分な費用を追加すれば、ダッシュボードへ特徴的なマット・ウッドトリムを与えて、スポーツクラシック風に仕上げることも不可能ではなさそうだ。

RWD化でクラシカルな911を想起させる

だとしても、911 スポーツクラシックには驚きがある。本物のスポーツカーと呼ぶに相応しい動的能力を備えるだけでなく、992型で、最も公道との相性が良いと思わせる特性を備えているのだから。

大雑把に表現するなら、911 ターボと後輪駆動の911 カレラGTSを足して2で割ったような992型。乗り心地がそのいずれよりも優れており、現実世界で存分に走りを堪能できる。これほど日常的に使えて、望外に楽しく、親しみやすいモデルは極めて珍しい。

ポルシェ911 スポーツクラシック(英国仕様)
ポルシェ911 スポーツクラシック(英国仕様)

911 スポーツクラシックの印象を輝かせている理由といえるのが、標準で四輪駆動となる911 ターボから、フロントのドライブシャフトが取り除かれたこと。これに対応させるように、マイルドなサスペンションも与えられている。

リアアクスルの後方に載るエンジンと、軽くなったフロントノーズが組み合わされることで、クラシカルな911を想起させるバランスが生まれている。そこへ、最新水準の操縦性と洗練度が融合している。

ピレリ社製のリアタイヤは、幅が315もある。臨んだ通りにオーバーステアへ持ち込めるが、基本的には巨大なトラクションで支えてくれる。

どんな路面でも乗り心地はしなやか。911 GT3のような圧巻の回頭性は備わらないとしても、特別仕立てのスタイリングを好むドライバーにとって、不満を感じないトレードオフだといっていいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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