悪路のスーパーヒーロー ジープ・ラングラーへ試乗 ロックレールで側面衝突に対応 12.3型モニター獲得

公開 : 2024.05.18 19:05

伝統のラングラーが小変更 12.3インチのタッチモニター獲得 271psで2.0L 4気筒ターボでも充分以上 運転して1番の幸せを感じるのはオフロード 英国編集部が評価

ビジネスの正当化で外せないラングラー

どうやら、ジープが好調らしい。伝統のラングラーが急激に受注を伸ばしたわけではなく、小さなアベンジャーが人気だから。英国では、前年比248%の売れ行きだという。

前輪駆動のバッテリーEVでスタートした、小さなクロスオーバーが主導権を握ってしまったら、ジープらしさは薄まるだろうか。それは、心配しなくて良いだろう。同社の関係者は、「コア(核心)を守りながら、範囲を広げる」という考えを示している。

ジープ・ラングラー(アンリミテッド) 2.0GME ルビコン(英国仕様)
ジープ・ラングラー(アンリミテッド) 2.0GME ルビコン(英国仕様)

ブランドの純粋性を保つには、商業的な安定性が欠かせない。しっかり、ラングラーは重要なポジションに据えられている。販売数を最大化すること以上に、ビジネスを正当化するうえで、外せない存在なのだろう。

今回、ジープがラングラーへ小さな改良を施したのも、このオフローダーを大切にしているから。新鮮さを保ちつつ、新しい安全規制に準拠するよう、アップデートされた。

1番の目標とされたのが、側面の衝突安全性を高めること。新しいカーテンエアバッグと、ジープらしくサイドステップも兼ねたロックレールを与え、それを達成している。跳ね上げた岩だけでなく、横から突っ込んでくるクルマも受け止めるというわけだ。

2024年2月以降の生産車は、運転支援システムも獲得する。車線維持支援に制限速度警告、ドライバー監視機能などが盛り込まれるそうだが、試乗車はそれ以前の生産で、実装されていなかった。働きぶりは確かめられていない。

タッチモニター獲得 271psで2.0Lでも充分以上

スタイリングでは、7本スロットのフロントグリルが、目立つよう立体的なデザインへ改められた。変化は小さく、既存のオーナーでなければ気づかないかもしれない。

インテリアでは、インフォテインメント・システム用として、12.3インチのタッチモニターを獲得。針が回る2枚のメーターや実際に押せるハードボタン、トランスファー用レバーなど、アナログな車内でありつつ、最新のデジタル技術が盛り込まれたわけ。

ジープ・ラングラー(アンリミテッド) 2.0GME ルビコン(英国仕様)
ジープ・ラングラー(アンリミテッド) 2.0GME ルビコン(英国仕様)

ソフトウエアは、ジープ・コンパスフィアット500eなどと同じ、Uコネクトと呼ばれるもの。最新のマセラティとも共有する。バージョンの古いアベンジャーより反応は素早く、メニュー構造は理解しやすい。

運転席の足元は狭い。ペダルは2枚だけでも、左足の置き場には困るほど。

パワートレインは、基本的にキャリーオーバー。ただし、ディーゼルエンジンとショートボディの2ドアは、現在の選択肢から消えた。プラグイン・ハイブリッドの4xeも、英国には導入されていない。構造上、右ハンドルに対応できないからだという。

結果として、販売されているのが2.0Lガソリンターボと8速ATを積んた、ロングボディのアンリミテッド。大きなボディに2.0Lと聞くとパワー不足に思えるかもしれないが、実際は271psで充分以上。驚くほど良く働いてくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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