ヒョンデ「アイオニック5 N」 なぜ、いま登場なのか? 1歩先行くBEVでの新たなる進化

公開 : 2023.07.15 18:45

他ブランドにはない新デバイス

まず、「Corner Rascal」については、ボディとシャシーを補強して剛性を上げ、またサスペンションやパワーステアリングのセッティングを最適化した。狙ったのは「ダイレクトなステアリングフィール」である。

次に、「Everyday Sportscar」。シフトタイミングについてN e-shiftを採用し、様々な走行シーンでキレのある走りと少しゆったりした走りを使い分けることができる。

アイオニック5 Nの前席内装
アイオニック5 Nの前席内装    ヒョンデ

サウンドについても、N Active Soundを採用してパフォーマンス性を実感できるような音の演出を仕立てた。これも走行シーンによって使い分けができる。

そして、「Racetrack Capability」では、Nグリン・ブーストと呼ぶ制御システムを採用し、最高出力478kWを実現した。

その他、Nドリフトオプティマイザー、Nローンチコントロール、Nトルクディストリビューションなど、「Racetrack Capability」を高める様々な制御システムを搭載しているのが特徴だ。
こうした「アイオニック5」の「N」向け開発には、ヒョンデが「ローリングラボ」と呼ぶ、コンセプトモデルを使うリアルワールドでの数年間に渡る走行テストの実績がある。

「N」はWRCというモータースポーツのイメージが強いが、前述のように各モデルのパフォーマンスを最適化する狙いがあり、「アイオニック5 N」ではこれまでのヒョンデの知見が集約されていると言えるだろう。

ハイパフォーマンス系BEV 走りは?

今回の発表では、「アイオニック5 N」の動力性能に関する数値や、制御システムの技術概要が紹介されただけであり、実際の走りについては知る由がない。

公開された画像などでは、サーキットで派手にドリフトしながらコーナーリングする「アイオニック5 N」の姿がある。ベースモデルの「アイオニック5」はコンテンポラリーなデザインテイストでゆったり走るイメージがあるため、サーキット走行シーンに対して若干の違和感を持つ人もいるかもしれない。

アイオニック5 N
アイオニック5 N    ヒョンデ

だが、「アイオニック5」を様々な走行環境で試乗してきた筆者の実体験を踏まえると、リア駆動がべースであるAWDとして、「さらにもう1歩先のパフォーマンス的な走りができる“余裕シロ”がある」と感じていた。その旨を、ヒョンデの開発担当者にも直接伝えている。

筆者としては、BEVとしては大柄な部類に属する「アイオニック5」が今回、「N」化したことは「アイオニック5」にとっての正常進化だと考えている。

見方を換えると、自動車メーカーの正規ブラントとしてBEVのハイパフォーマンス化を進めるには、ベース車でのそれ相当のパフォーマンスが必須だと言える。BEVは制御系のチューニングによって出力増加の幅が広いためだ。

当分の間、「アイオニック5 N」はグローバルで、ハイパフォーマンス系BEVのベンチマークになるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

関連テーマ

おすすめ記事

 

ヒョンデ アイオニック5の人気画像