独レースで大暴れ メルセデス・ベンツ190E コスワース 英国版中古車ガイド 維持費に報いる

公開 : 2023.08.21 08:25

ドイツ・ツーリングカー選手権で大暴れした190E コスワース。希少性が高まるスポーツサルーンを、英国編集部がご紹介します。

コスワースの経験が注がれた190E

これまで少なくない企業が、高性能なモデル開発のため、確かな技術力を持つコスワースを頼ってきた。1980年代の小さなメルセデス・ベンツ、190Eにも、同社の経験が惜しみなく注がれた。

その結果誕生したのが、190E 2.3-16と190E 2.5-16だ。開発当初、2.3-16はラリーカーに登用される予定だったが、四輪駆動のアウディ・クワトロが台頭したことで計画が変更。ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)へ、戦いの場を移した。

メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 エボリューションII(1990年式/W201型/欧州仕様)
メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 エボリューションII(1990年式/W201型/欧州仕様)

DTMのレギュレーションでは、レースへ参戦する車両には、同等の公道用モデルが売られていることが求められた。かくして、1983年のフランクフルト・モーターショーで190E 2.3-16が発表される。

ベースの190Eが搭載していたエンジンは、136psの2.3L直列4気筒だった。そこへコスワースがチューニングを施し、最高出力184ps、最大トルク24.0kg-mを獲得。レブリミットは7000rpmへ設定された。

リアタイヤへパワーを伝えたトランスミッションは、1速が横に飛び出たドッグレッグ・パターンの5速マニュアル。0-100km/h加速は、当時では俊足といえる7.5秒で、最高速度は230km/hに届いた。

サスペンションやステアリングにも、コスワースは関与。メルセデス・ベンツの技術者と連携を取りながら、ステアリングレシオはクイックに。ステアリングホイールの直径は小さくなり、鋭敏な操縦性を叶えた。

見た目も、通常の190Eと差別化された。フェンダーは広げられ、専用のサイドスカートとリアスポイラーを装備。洗練された印象はそのままに、好戦的な雰囲気を漂わせた。

アグレッシブなボディキットをまとったエボ

1988年に、進化版といえる190E 2.5-16が登場。4気筒エンジンは2.5Lへ拡大され、最高出力は203ps、最大トルクは24.9kg-mへ上昇した。

さらに1989年には、伝説といえる2.5-16 エボリューションIが発売される。大胆なボディキットをまとい、生産数は僅か502台。その後、1990年にエボリューションIIも登場。どちらも、近年は高嶺の花となっている。

メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 エボリューションII(1990年式/W201型/欧州仕様)
メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 エボリューションII(1990年式/W201型/欧州仕様)

190E 2.3-16と190E 2.5-16の完成度は高水準といえたが、低くないランニングコストが弱点といえた。定期的なメンテナンスを怠ると、高額な修理費が発生することも珍しくなかった。

エボリューションでは、レーシングカー然としたボディキットは経年劣化でひび割れしやすい。塗装も退色しがちで、状態維持には相応な手間が必要になる。

とはいえ、実際にステアリングホイールを握れば、そんな悩みは忘れてしまう。今でも、名車として語り継がれるだけの理由がある。

4気筒エンジンはパワフルで、ステアリングは正確。適度なボディサイズと相まって、一体感のあるドライビング体験を提供してくれる。スタイリングやインテリアは端正で、当時の最高水準の技術も投じられている。

多少の維持費が掛かることは確かだが、資金的な余裕があれば、それに報いる喜びを提供してくれる。ご興味をお持ちで、購入できる機会が巡ってきたのなら、ためらう必要はないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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