高速は快適に・峠道は軽快に メルセデス・ベンツ190(W201) 英国版クラシック・ガイド 後編

公開 : 2022.08.13 07:06

ドイツの名門を苦境から救った、W201型の190クラス。英国編集部は魅力的なネオクラシックだと評価します。

ブランドの長所が小さなボディに

メルセデス・ベンツの長所が小さなボディに落とし込まれた、190クラス。英国に残存する例を調べてみると、走行距離が30万kmを超えるクルマも珍しくない。

適切なメンテナンスを継続していれば、その程度の走行距離なら問題なく受け入れてくれる。ボディの状態も、同じ年式のクルマと比べれば良好なものが多い。

メルセデス・ベンツ190クラス(W201型/1982〜1993年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ190クラス(W201型/1982〜1993年/英国仕様)

それでも、購入する場合は機械的な状態の確認は不可欠。エンジンで注意するべきは、フェイスリフト前の4気筒シングルカムに組まれているタイミングチェーンだろう。

走行距離が長くなるほどチェーンが伸びたり、不具合を招く率は高くなるため、11万km前後で交換する必要がある。フェイスリフト後のエンジンには、耐久性の高い2列ローラーチェーンが採用されている。

ヘッドガスケットの劣化は珍しくない。ラジエータークーラントを長期間放置することで、腐食防止剤の機能が果たせなくなることが原因のようだ。

ボッシュ社製のインジェクションは、定期的に乗っている限り信頼性は高い。だが、長期間乗らないでいると不具合を招く。

オートマティックは、フルード管理さえ怠らなければほぼトラブルフリー。マニュアルも、リンケージのブッシュとフルードが消耗品だが、それ以上のメンテナンスが求められることは珍しい。

リアのデフからフルード漏れがないか、異音が出ていないかは確認ポイント。ダッシュボードの警告灯が正常に消灯するかも確かめたい。

優れた品質や堅牢性を表現する端正な容姿

メルセデス・ベンツとして、オプションにはサンルーフやエアコン、パワーウィンドウ、パワーミラー、アームレスト、MBテックスと呼ばれたクロスやベロアの内装など、様々なアイテムが用意されていた。

またスタイリング・パッケージも、英国ではスポーツライン、AMG、コスワースから選べた。イメージ通りの190クラスを、時間を掛けて探したいところ。

メルセデス・ベンツ190クラス(W201型/1982〜1993年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ190クラス(W201型/1982〜1993年/英国仕様)

アンチロックブレーキ(ABS)を装備した車両には、オートマティック・デフロック(ASD)と呼ばれる機能が実装されていた。雪上などでトラクションを高めるため、25km/h以上でデフにロックが掛かるシステムだ。

サスペンションも耐久性は高い。スプリングが折れていないか、ボールジョイントが摩耗していないか、サスペンションから液漏れしていないかなどを確かめたい。ハイドロニューマチックを用いたセルフレベリング機能の動作もチェックポイント。

ツーリングカー・レースに影響され、社外品のダウンサスで、車高が落とされている例は少なくない。人気のチューニングといえたが、乗り心地と操縦性のバランスが崩れてしまうことはある。

ブルーノ・サッコ氏が手掛けたスタイリングが、今も魅力的に映るW201型の190クラス。秀でたメルセデス・ベンツが凝縮されている。端正な容姿は、優れた品質や堅牢性も表現しているように思える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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