残したいV8+FRのスポーツ レクサスLC フォード・マスタング ジャガーFタイプ 3台乗り比べ 前編

公開 : 2023.08.26 09:45

選択肢が一気に狭まった、V8エンジンを積んだ後輪駆動モデル。英国で選べる3台の魅力を、編集部が比較試乗で再確認しました。

スポーツカーの定番といえたV8+FR

グレートブリテン島の中央、ピーク・ディストリクト国立公園を楽しむ登山者やサイクリストにも、特徴的なサウンドが届いていることだろう。7月とはいえ平日だから、週末ほど混雑していないが、若干お騒がせしていることに気が引ける。

とはいえ、残された機会が限られているなら、存分に楽しむしかない。遠からず、この土地の車道で響くのは、主にモーターとタイヤのノイズくらいになるだろう。牛の鳴き声や小鳥のさえずりを、邪魔することもなくなる。

ダークグリーンのジャガーFタイプ P450 スーパーチャージド75 コンバーチブルと、ブラックのフォード・マスタング・マッハ1、ホワイトのレクサスLC 500
ダークグリーンのジャガーFタイプ P450 スーパーチャージド75 コンバーチブルと、ブラックのフォードマスタング・マッハ1、ホワイトのレクサスLC 500

一見すると、この3台は同じグループへ属するように思えない。しかし、運命と偶然が折り重なった、共通する内容をボディの内側へ秘めている。

V8エンジンをフロントに搭載し、リアタイヤを回して走る、英国で新車として購入できる最後のスポーツカーなのだ。1950年代の後半から、比較的手頃なミドシップモデルが登場した1990年代までは、このパッケージングは高性能モデルの定番といえた。

ACコブラにシボレーコルベットTVRグリフィス、ポルシェ928、ジャガーXK8、アストン マーティンヴァンテージV8など、多くの名車が採用してきたことはご存知の通り。しかし、近年は絶滅寸前にある。

1番記憶に残り、残したいモデルはどれか

確かに炭化水素を燃やし、二酸化炭素を撒き散らす。しかし、バッテリーEVへ充電する電気が持続可能性を担保した技術で発電されなければ意味がないように、同等の配慮がなされた合成燃料の技術が熟成すれば、延命する道筋はあるように思う。

2023年のグレートブリテン島で生き残った3台は、日本製ラグジュアリー・グランドツアラーと、引退を控えた英国製2シーター・スポーツカー、アメリカン・マッスルカーの代表格と、それぞれ特徴が異なる。それでも、V8+FRという構成では共通している。

ダークグリーンのジャガーFタイプ P450 スーパーチャージド75 コンバーチブルと、ブラックのフォード・マスタング・マッハ1、ホワイトのレクサスLC 500
ダークグリーンのジャガーFタイプ P450 スーパーチャージド75 コンバーチブルと、ブラックのフォード・マスタング・マッハ1、ホワイトのレクサスLC 500

最もお手頃なのが、フォード・マスタング・マッハ1。英国では6万ポンド(約1086万円)を切る価格で販売されている。レクサスLC 500はこの中で1番お高いが、ベースグレードを選べば10万ポンド(約1810万円)を超えない。

登場から10年が過ぎた、ジャガーFタイプのミドルグレードのお値段は8万1905ポンド(約1482万円)で、2台の中間に位置する。2023年内に生産を終える予定にあるから、ご興味をお持ちなら、急いでディーラーへ向かった方が良いだろう。

とはいえ、残りの2台もいつまで提供が続くのかわからない。思い立ったが吉日だ。

今回は、猶予僅かなオールドスクール・レシピの魅力を再確認してみたいと思う。どれが最も記憶に残るモデルだろうか。別れが惜しく、後世へ残したいと感じるだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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