残したいV8+FRのスポーツ レクサスLC フォード・マスタング ジャガーFタイプ 3台乗り比べ 後編

公開 : 2023.08.26 20:25

選択肢が一気に狭まった、V8エンジンを積んだ後輪駆動モデル。英国で選べる3台の魅力を、編集部が比較試乗で再確認しました。

速度の急上昇でドライバーを飲み込むFタイプ

75周年を記念した仕様のジャガーFタイプ P450 コンバーチブルも、他の2台に負けない魅力がある。突き詰めれば、V8エンジンのスポーツカーを選ぶ人は、圧倒的な速さを求めているはず。スーパーチャージャーで過給されるFタイプは、確実に速い。

ジャガーのAJ133型5.0L V型8気筒ユニットは、フォードマスタング・マッハ1やレクサスLC 500が勢いを増そうかという低い回転域から、凄まじい加速を披露する。さも当然のように、ドライバーを速度の急上昇へ飲み込む。

ダークグリーンのジャガーFタイプ P450 スーパーチャージド75 コンバーチブルと、ブラックのフォード・マスタング・マッハ1
ダークグリーンのジャガーFタイプ P450 スーパーチャージド75 コンバーチブルと、ブラックのフォード・マスタング・マッハ1

そのかわり、5000rpmを超えた辺りで勢いが鈍り始める。メカニカルノイズも含め、サウンドのシャープさでは今回の2台に及ばない。クラシック・ジャガーのような音響体験までは、備わっていないといえる。

恐らく、Fタイプ P450単独で運転していれば、気にならないレベルだろう。しかしレクサスとフォードのV8エンジンが横にあると、若干個性が弱いように思えてしまう。

早めにシフトアップを繰り返し、図太いエグゾーストノートへ包まれながら、中回転域の豊かなトルクの波に乗るのが理想的。Fタイプ・コンバーチブルのスイートスポットだといえる。

瞬間的な変貌ぶりは見事なほど

全体的なドライビング体験はどうだろう。マスタング・マッハ1は、LC 500やFタイプ P450と比較すると、ボディサイズはひと回り大きい。ところが、適した環境でムチを入れれば、ぐっとドライバーとの一体感が強まる。

LC 500もドライブモードを引き上げれば、約2tあるボディをフラットに保ちながら、意欲的にコーナーを巡っていける。その瞬間的な変貌ぶりは感動的なほどで、遥かに軽量なラグジュアリー・クーペを運転しているような気にさせる。

レクサスLC 500(英国仕様)
レクサスLC 500(英国仕様)

他方、今回のFタイプ P450はコンバーチブル。ボディの振る舞いには、若干の緩さが隠せない。それでいて乗り心地は、やや不釣り合いだと思えるほど硬い。

多くのスポーツカーは、モデルライフを通じてシリアスな方向へ進みがち。アルミホイールのサイズが大きくなり、シャシー剛性が高くなり、サスペンションは強化される。多くのドライバーへ新しい体験を与え、振り向かせるために。

日産フェアレディZも、BMWのMモデルも、同様の道を歩んでいる。ジャガーもこれに準じている。登場したばかりの頃のFタイプは、英国郊外の傷んだアスファルトへしなやかに馴染んでいたが、10年間の進化を経て足腰が硬くなったようだ。

記事に関わった人々

  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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