NA V8+FRのサバイバー レクサスLC 500へ英国試乗 小変更 お茶を濁す10速AT

公開 : 2023.02.14 08:25

2023年仕様としてアップデートが施されたLC。快適性は向上したものの、10ATの質感が惜しいと英国編集部は評価します。

サスペンションやインテリアを小変更

ジャガーBMWアストン マーティンメルセデス・ベンツベントレーといった名門は、まだV8エンジンを搭載した後輪駆動の上級グランドツアラーをラインナップしている。とはいえ、絶滅間際のレッドリスト状態にあることは間違いない。

メカニズム的な多様性に富んだ自動車が、遠い存在になる日も近い。しかし、今回試乗したレクサスLC 500は、最後まで生きながらえそうな1台に思える。サバイバーとしての、不思議な訴求力がある。

レクサスLC 500 スポーツ+クーペ(英国仕様)
レクサスLC 500 スポーツ+クーペ(英国仕様)

SUVを中心に展開するレクサスだが、2023年にもLCへ改良を施した。仕上がりは完璧とはいえないかもしれないし、英国市場での販売数は年間100台にも達していないが、このカテゴリーの重要性を理解しているのだろう。

今回のアップデートは、2021年に施されたものほど大きな内容ではないが、メカニズム的な面にも及んでいる。長距離の快適性とスポーティさを高めるため、サスペンション・スプリングのレートと、アダプティブ・ダンパーの特性が変更された。

10速ATには、新しくシフトロック機能が与えられた。インテリアでは、レクサスが表現するところの「深く吊るされた」、新デザインのフロントシートも獲得している。

英国の場合、ホッカイドウ・エディションやブラック・インスピレーションという、特別仕様も設定されている。インテリアの素材やカラーが、テーマに沿ってコーディネートされる。

素晴らしいV8エンジン お茶を濁す10速AT

LCで1番スポーティな、今回試乗した500 スポーツ+クーペには、後輪操舵システムにトルセン式のリミテッドスリップ・デフが装備される。そして長いボンネットの内側には、素晴らしい自然吸気の5.0L V型8気筒エンジンが納まっている。

ターボエンジンとは異なり、低速域でのトルクはさほど太くない。上級グランドツアラーらしい勇ましいダッシュには、4000rpm以上まで回転数を高める必要はあるが、その領域に届くとクリーミーでアグレッシブな質感を味わえるようになる。

レクサスLC 500 スポーツ+クーペ(英国仕様)
レクサスLC 500 スポーツ+クーペ(英国仕様)

アクセルペダルの角度へ鋭く反応し、望んだパワーが放たれる。ドライブモードに応じてアクティブ・エグゾーストが可変するため、適切なモード選択をすれば、サウンドも聴き応えが増す。

折角のお茶を濁しているのが、10段もあるオートマティック。最高の和牛ステーキを正しく調理していないような、そんな気分にさせられる。

レクサスは、ドライブトレイン技術の革新を怠らない。それは理解できるものの、シャープとはいえない変速が何度も連続し、屈指のV8エンジンを存分に堪能できないのだ。燃費を伸ばすためとはいえ。

いま何速に入っているのか確認する方法は、メーターパネルに表示される数字のみ。Dレンジのままだと、CVTのようにすら感じられる。

ただし、マニュアル・モードへ切り替えれば不満は解消する。シフトパドルの打感は若干ソリッドさに欠けるが、素早く意欲的に望んだギアへつないでくれる。この状態なら、期待通りといっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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