世界に1台だけのシルエット ロールス・ロイス、新シリーズ「ドロップ・テイル」公開 豪華絢爛な2シーター

公開 : 2023.08.21 18:25

1人の顧客のために1台だけが作られるオーダーメイドの世界に、ロールス・ロイスの最新作「ドロップ・テイル」が加わりました。その第1弾は赤と黒を基調とする華やかな2シーターで、従来にはないリアエンドを特徴とします。

新シリーズ第1弾 華やかな2シーター登場

英国の高級車メーカーであるロールス・ロイスは、限定生産モデルの新シリーズ「ドロップ・テイル」の第1弾として、ラ・ローズ・ノワール(La Rose Noire)を公開した。

2シーターのロードスターであり、まったく新しいモノコックシャシーから作られたコーチビルド(オーダーメイド)のワンオフモデルである。ロールス・ロイスは同様のモデルを合計4台製作するが、いずれも顧客の好みに応じて高度にカスタマイズされる。

ロールス・ロイス「ラ・ローズ・ノワール」
ロールス・ロイス「ラ・ローズ・ノワール」    ロールス・ロイス

4台のドロップ・テイルは4人の顧客との4年間にわたるコラボレーションの成果とされており、超高級スペシャルシリーズ最新作として、ロールス・ロイスのコーチビルド能力の「絶対的頂点」を示すものだと同社は述べている。

価格は公表されていないが、4台のドロップ・テイルはいずれも、2021年に発表されたボート・テイルの2000万ポンド(約3億7000万円)を上回ると予想される。

ドロップ・テイルはスチール、アルミニウム、カーボンファイバーから構成される新しいモノコックシャシーを採用している。ロールス・ロイスはこれまで、カリナン、ゴースト、ファントムにも使用されているアーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー・プラットフォームをベースに特注モデルを製作してきたが、今回初めて既存車両をベースにすることなく、一から設計した。

パワートレインはおなじみの6.75L V12ツインターボで、出力はファントムより30psアップする一方、トルクは6.0kg-m減少し、合計出力601ps、最大トルク85.7kg-mを発生する。

ロールス・ロイスのデザイン責任者であるアンダース・ウォーミング氏はAUTOCARに対し、電動パワートレインではなくV12を採用した理由について、ドロップ・テイルを「祝福する」ためとし、「V12は今後数年にわたって祝福するパワートレインです」と語った。また、電動車のコーチビルドについては「時間が解決してくれるだろう」と付け加えた。

内外装はフル・オーダーメイド 手作りのウッドパネル

ドロップ・テイル第1弾となるラ・ローズ・ノワールは全長5.3m、全幅2.0mと、EVのスペクターよりも一回り小さい。ホットロッドをイメージしたという低いクーペ風のルーフラインによって定義されるシルエットは、フル・オーダーメイドである。ブレード形状のハンチや、セミクリアラッカー仕上げのカーボンファイバー製大型リアディフューザーを備え、ロールス・ロイスの標準モデルよりも明らかにスポーティなキャラクターを強調している。

カーボンファイバー製ルーフパネルは脱着可能も、簡単に取り外しできるという。また、ルーフパネルの大部分にはエレクトロクロミック・ガラスが採用され、ボタン1つで調光することができる。

ロールス・ロイス「ラ・ローズ・ノワール」
ロールス・ロイス「ラ・ローズ・ノワール」    ロールス・ロイス

ラ・ローズ・ノワールの独特なスタイルを形作る上で重要な役割を果たしたのがエアロダイナミクスだ。ロールス・ロイスは、急峻なリアエンドの形状は「通常、ダウンフォースを生み出すのに適していない」、つまり補助装置なしでは高速走行時の安定性が不十分であると指摘する。しかし、安直にスポイラーを取り付けるのではなく、リアデッキのデザインを微調整し、美観を損なうことなく必要なダウンフォースを生み出した。これには2年の歳月と20回の試行錯誤を要したという。

一方、フロントエンドのデザインは馴染み深いものだが、標準モデルではグリルのスラットが直線的で直立しているのに対し、ラ・ローズ・ノワールでは湾曲しており、角は直角ではなく面取りされている。ロールス・ロイスによれば、こうした変更は同車の「インフォーマル・スピリット」を反映したものであるとのこと。

その「インフォーマル」なアプローチは室内にも受け継がれ、「親密」な環境を作り出すことを目指した。スイッチ類は可能な限り見えないように隠されており、視界に残されたボタンは3つだけ。センターコンソールは電動式で、インフォテインメント・コントロールのダイヤルを隠すことができる。

さらに「ロマンティック」な雰囲気を強調するため、広大なウッドパネルがあしらわれている。このパネルは、ロールス・ロイスの職人が1人で作ったもので、作業に集中するため、1日1時間以内、黙々と9か月にわたって製作したと言われている。このウッドパネルはシカモアの木で作られており、舞い落ちるバラの花びらを表現しているという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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