完璧な無音と無振動 ロールス・ロイス・スペクターへ試乗 卓越のドライバーズクーペ 前編

公開 : 2023.07.11 08:25

英国伝統ブランドの新時代を告げるBEVのクーペ、スペクター。卓越の仕上がりに、英国編集部は感銘を受けたようです。

ツインモーターで584ps 航続距離は529km

遂にロールス・ロイス・スペクターの量産仕様へ試乗することが叶った。同社初となる、新時代を告げるバッテリーEVだ。最近ラインナップから姿を消したクーペのレイスではなく、2008年のファントム・クーペの後継モデルに当たるという。

基礎骨格をなすのは、ロールス・ロイスのアーキテクチャー・オブ・ラグジュアリーと呼ばれる、汎用性の高いもの。このアルミニウム製プラットフォームを利用したモデルとしては、4台目となる。

ロールス・ロイス・スペクター(北米仕様)
ロールス・ロイス・スペクター(北米仕様)

スペクターのボディサイズは、全長が5453mmで、全幅が2080mm、全高が1559mmとかなり大きい。例えるなら、ダブルキャブを備えたピックアップトラックより、さらにひと回り大きい。

パワートレインは、2基の駆動用モーター。前後アクスルに1基づつ搭載され、フロント側は最高出力258psと最大トルク37.1kg-mを発揮し、リア側は490psと72.3kg-mを生み出す。

システム総合での最高出力は584ps、最大トルクは91.6kg-mとなる。2つのモーターが、同時に全力で働くことはないようだ。

トランスミッションはシングルスピード。123年前にロールス・ロイス・リミテッドを創業した、チャールズ・ロールス氏が追求し始めた、完璧な無音と無振動を実現している。電動のパワートレインは、このブランドにピッタリといえる。

駆動用バッテリーは、実容量で102kWhと巨大。WLTP値で529kmと、不足ない航続距離を持つ。途中のショッピングセンターで充電することなく、グレートブリテン島西部のコッツウォルズからロンドンまで往復できる。

ひと目でわかるロールス・ロイスなデザイン

駆動用バッテリーの重さは、実に700kgにもなる。それはすべてキャビンのフロア部分に敷かれており、必要なハーネスやパイプ類も通されている。シャシーの底面は、Cd値0.25と空気抵抗を小さく抑えるため、フラットな状態だという。

ロールス・ロイスのオーナーの場合、平均で6台ほどクルマを所有しているそうだが、それでも年間4800km程度は距離を重ねるとか。そんな使われ方でも、最大195kWまで対応する急速充電能力がしっかりバックアップする。

ロールス・ロイス・スペクター(北米仕様)
ロールス・ロイス・スペクター(北米仕様)

スタイリングは、ひと目見ただけでロールス・ロイスだとわかるもの。過去にないほどワイドなパルテノングリルは、空気を滑らかに流すよう柔らかなカーブを描く。テールライト回りは、ボディ側面の空気をきれいに導くよう、シャープなエッジを描く。

ルーフラインは滑らかにトランクリッドへつながり、衝撃安全規制を満たしつつ、可能な限り後方へ伸ばされている。フロントの先端に飾られるスピリット・オブ・エクスタシーでさえ、風洞実験で数100時間も形状が練られたそうだ。

大きなラジエーターへ空気を当てる必要はなくなっても、ロールス・ロイスのクーペらしい、堂々とした顔立ちを持つ。2030年までに、同社は内燃エンジンモデルをすべて終了すると発表している。今後、どのようなデザインになるのか興味深い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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