ロールス・ロイス・スペクター 詳細データテスト 品格ある走り 新時代ロールス 革新的EVではない

公開 : 2024.03.02 20:25  更新 : 2024.03.08 18:29

ロールス・ロイス初の市販EVは、長い目でのユーザーメリットを重視し、あえて控えめに仕上げられた感のあるクルマです。電動化されても、その走りは紛うことなきロールス。そこに時代を塗り替えるような斬新さはありません。

はじめに

電気自動車が最近になって新たに生まれてきたものだという思い違いは、じつに広く行き渡っている。20世紀初め、裕福なクルマ好きで自動車ディーラーのチャールズ・ロールスとエンジニアのヘンリー・ロイスが運命の出会いを果たしたころ、EVは流行の最中にあった。1899年当時、世界最速のクルマは電動だったしロンドン中心部は電動馬車が行き交っていた。1900年には、アメリカで登録される新車の1/3が電動だった。

新たに立ち上げたロールス・ロイス・カーの自動車設計者兼共同経営者として、ロイスがまず手をつけるべき仕事のひとつが、市街地向け内燃エンジン車の開発だった。目指したのは、電動車と同程度のクリーンさや静かさ、スムースさ、使いやすさを備えながら、EVが街乗り馬車代わりに止まっている理由である、充電と航続距離の問題を排除したクルマ。短命に終わったホイールベース違いの2台、1905年のV8ランドレーとレガリミットが、その成果だ。

テスト車:ロールス・ロイス・スペクター
テスト車:ロールス・ロイス・スペクター    MAX EDLESTON

ロイスは電気技師としての経験から、当時の電動車技術の限界を見抜いて内燃機関へシフトした。以来、数十年に渡り、ロールス・ロイスはどんなライバルよりもスムースで信頼性があり、走らせて楽しい、高級車の頂点に君臨してきた。世界初のパーフェクトバランス直6を積んだ40/50シルバーゴーストは、もはや伝説的存在だ。

ひるがえって現在。創業から1世紀を超えたロールスを取り巻くのは、電動化の波と、1904年当時以上にそれを受け入れる準備が整っている世界だ。そんな状況にあって、ロールスはついに、自社初の電動車を送り出してきた。EVに反旗をひるがえして生まれたメーカーが、沈黙を破って送り出した究極の電動高級車。じっくり品定めしていこう。

記事に関わった人々

  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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