フォルクスワーゲン・ゴルフGTI

公開 : 2013.09.27 20:45  更新 : 2017.05.29 18:58

GTIが“Grand Tourer Injection”なのか、それとも“Grand Tourer International”なのかは不勉強にして知らない。しかし歴代のゴルフGTIというクルマが後者のニュアンスを多分に含む、すなわち高速長距離移動を旨とするモデルであることは経験から察している。言い換えればゴルフGTIとは、同じ高性能であっても、例えばホンダのタイプRやルノーのRSのように旋回機動に特化した方向ではなく、盤石の安定性によって高い平均車速を提供するという意味において高性能という機械なのだ。

先々代や先代のGTIは、そのニュアンスを念頭に置く限りは上等な高性能Cセグメント車であった。というのも、申し分ない加速能力と安定性を誇る一方で、小回り旋回を敢行するとリヤの能力に対してフロントがあっさり負けて、真っ直ぐ突進しようとする欠点を持っていたからだ。これは重量の嵩むDSG変速機を前オーバーハングに積む物理的な制約のしからむところが大で、エンジンの軽い1.2ℓ以外の全グレードに共通するネガでもあった。

ということを踏まえて新しいⅦ世代のGTIに乗ってこれを検分するならば、焦点は<曲がるのか>というところに集約されるのは当然である。

さて、結論から言ってしまえば、ゴルフⅦのGTIは前2世代より曲がる。FSWショートコースと一般公道の双方における試乗でそれは明白であった。

Ⅶのサスペンション形式は、前ストラット+後ろ変形ダブルウィッシュボーンで、これは前2世代と同じ。しかし、その仕上げは微妙に異なっており、操舵初期から最後まで終始どっしり踏ん張り続けた前2世代よりも融通の効くものになっている。感覚的な曲がりやすさは、定常旋回時の特性とは別にリヤが踏ん張り出すタイミングに左右されるが、前2世代は操舵でハナが入ろうとするやいなやリヤが踏ん張りを出してきて、せっかく起動しかけたヨー運動が打ち消されてしまう傾向があった。しかし新型ではリヤの踏ん張りは柔らかく漸進的に発生し、ヨー起動の邪魔をしない。GTIにもその傾向は敷延されている。また、リヤサスはロールとともに対地キャンバーが崩れるジオメトリーだが、早期から踏ん張らせることによってそれによるリヤのロールオーバー移行を回避していた前2世代に対し、新型はリヤに沈み込む動きを少しだけ盛り込み、リヤの粘りを適度なところで抑えている。GTIにおいてもその傾向ははっきり見取れ、中速以上の定常旋回において車体は申し分なく回り込む挙動をとり、前2世代のように、高負荷旋回時にいつフロントがスッコ抜けるのかと心配する必要は大いに減った。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記