不自然に「宙に浮いたボディ」 ロータス・シックス(1) 傑作はオフロードも強かった

公開 : 2024.01.13 17:45

1172ccとは思えないほど太いトルク

非力なエンジンを搭載したオフロードモデルらしく、トランスミッションのギア比は信じられないほど低い。アスファルト上での発進時は、1速を必要としない。フォード由来の3速MTは、2速と3速の間が離れており、70km/h以上まで2速で引っ張れる。

フォードのサイドバルブ4気筒ユニットは、旧式な1172ccとは思えないほどトルクが太い。アクアプレーン社のチューニング・パーツと、ハイリフトなニューマン社製カムが組まれている。

ペール・ブルーのロータス・シックス・トライアルレーサーと、アルミニウム・シルバーのロータス・シックス・ロードレーサー
ペール・ブルーのロータス・シックス・トライアルレーサーと、アルミニウム・シルバーのロータス・シックス・ロードレーサー

推定される最高出力は、ノーマルの33psより若干高いだけだろう。とはいえ、静止状態から勢いよくスピードを乗せていく。

トライアルレースでは、ロードタイヤを履くという決まりがあり、リミテッドスリップ・デフの装備は許可されていなかった。優しく粘り強いパワーデリバリーが、必然的に求められた。

ツイン・リーディングシューを備えるフロントのドラムブレーキは、感心するほどしっかり効く。強力なリアブレーキは、ハンドレバーで操る。

フロントノーズは短い。木々や地面の岩を避けるのに、理想的な前方視界を提供している。フロントタイヤは大きく向きを変える。直進時のステアリングは曖昧で、左右へふらつく。

コーナーでは、思い切りボディが傾く。アクセルペダルはベタ踏みのまま、なんとなく意図したラインの付近をトレースしていく。かなり特殊なロータスだ。

36.3kgしかないセブンのシャシー

このHEL 46のシャシーを製造したのは、プログレス・シャシー・カンパニー社。4番目に作られたものだと考えられる。ボディはウィリアムズ&プリチャード社が仕上げた。

ロータスへ製作を依頼したのは、ホレス・シンクレア・スウィーニー氏。ロイヤル・オートモビル・クラブ(RAC)のナショナル・トライアルズ規定に則り、フォード・トライアル・スペシャルとして提供されていた部品が利用されている。

ロータス・シックス・トライアルレーサー(1948年式/英国仕様)
ロータス・シックス・トライアルレーサー(1948年式/英国仕様)

トライアル用シックスのパンフレットで、ロータスはシャシーが36.3kgしかないことを強調していた。「スポーツレーシング・ユニットほど、高度ではありません。リジッドかスイングアクスルのサスペンションを、お好みで選べます。価格は110ポンドです」

フロントアクスルは、コイルオーバー・ダンパーが支える。シャシー番号は残っていない。本来は、左右に別れたフロントアクスルのブラケット上に、プレートが備わっていたはず。

エンジンは、通常のシックスより高い位置に搭載されている。キャブレターの吸気用トランペットが、ボディサイドから突き出ている。空間を稼ぐため、シャシーレールの左上部分は形状が変更されている。

スウィーニーはトライアルレースへ挑み、1953年のフランスで勝利。同じ年にシックスはアーサー・ヘイ氏という人物へ売却された。

彼は10年という所有期間に、グレートブリテン島南西部のエクセターやランズエンド、北東部のエディンバラなどの長距離トライアルレースへ参戦。モーターサイクリング・クラブから「トリプル」賞を贈られるなど、好成績を収めた。

この続きは、ロータス・シックス(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ポール・ハーディマン

    Paul Hardiman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ロータス・シックスの前後関係

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