能力を「公道で使い切れる」セブン 買うには特別講習が必要なHPC ケータハム 7台を乗り比べ(2)

公開 : 2024.01.06 17:46

ケータハムがセブンを生産し始めてから50年 チャップマンの思想を体現したパッケージング 英国編集部が7台の比較で魅力を再確認

特別講習が必要だったHPC 1700

ケータハム・セブンは長年、数え切れないほどのエンジンを搭載し、細かなシャシーのアップデートを受けてきた。また殆どの例が、オーナーの手で何らかのチューニングを受けているだろう。

それでも1990年までは、ロータス・ツインカム・ユニットと並んで、1600ケント・ユニットやCVHユニットなど、フォード社製エンジンが主力だった。以降は、英国オペルヴォグゾールと、ローバーのエンジンも採用されていった。

ケータハムHPC 1700(1986〜1995年/英国仕様)
ケータハムHPC 1700(1986〜1995年/英国仕様)

希少なケータハムHPC 1700も、フォード由来のHPCエンジンを積む。BDAユニットがベースで、1699ccのクロスフロー・ブロックとコスワース・シリンダーヘッドを載せ、最高出力は172psがうたわれた。

このHPC 1700を購入するには、事前にジョン・ライオンズ・ハイ・パフォーマンス・コース(HPCの由来)と呼ばれる、特別講習を受ける必要があった。1986年の発売時の価格は1万2000ポンドで、それまでで最も高価なケータハムでもあった。

「速いクルマには、特別な技術が必要です。トレーニングを受けなければ、完全には身に付けられません」。と同社は主張していた。

ダークグリーンのHPC 1700は、先出のジェームスに影響を受け、ナイジェル・ブランディン氏が約20年前に購入したそうだ。「技術的に挑戦していることが好きなんですよ。向き合い、理解する必要があります」

サーキットで能力を解き放つと、アルカンターラ巻きのステアリングホイールへ繊細な感触が伝わってくる。HPCエンジンは扱いやすく、回転の上昇とともにパワーが勢いよく放出される。

本来の能力を公道で使い切れる強み

9500rpmまで問題なく許容するらしいが、今回は7500rpm以下へ抑えておく。それでも、ビスター・ヘリテージのサーキットでは手に余る。0-97km/h加速5.0秒という数字以上に、恐ろしいほど速い。

技術が求められるコーナーでは、手のひらへ明確な感覚が伝わり、素早く導ける。シャシーはドライバーへ優しく、すべてが調和している。

ケータハム・クラシック・スプリント1600(1992〜1998年/英国仕様)
ケータハム・クラシック・スプリント1600(1992〜1998年/英国仕様)

ステアリングホイールをコーナーの頂点目掛けて回し、アクセルペダルを傾ければ、リミテッドスリップ・デフを効かせられる。派手さ重視のテールスライドも、タイトな四輪ドリフトも自在。縁石へ乗り上げても、落ち着きは失わない。

対して、能力を公道で使い切れるという特長も、セブンの魅力になってきた。ジョン・シモンズ氏が大切にするレッドのケータハム・クラシック・スプリント1600が、それを物語る。

クラシックが発表されたのは、1992年のロンドン・モーターショー。多くの人に楽しんでもらうため、7450ポンドという訴求力の高い価格で提供された。

装備は簡素。燃料計とヒーター、フルサイズのフロントガラスは標準ではなかった。とはいえ、ジョンのクルマにはSEパッケージが組まれ、それらのアイテムに加えてアルミホイールを得ている。

エンジンはベーシックな1600 GT仕様ではなく、クロスフローの1600スプリント仕様。ツイン・キャブレターが組まれ、最高出力は85psから101psへ引き上げられている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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