「対極的な分野」で能力を発揮 ロータス・シックス(2) 現代へ受け継がれる軽量なコンセプト

公開 : 2024.01.13 17:46

ロータス=ライトウエイトの方程式を生み出したシックス 山岳路を駆けるトライアルレースでも強さを証明 セブンの前身を英国編集部がご紹介

しなやかにタイヤを接地させる長いサス

ロータス・シックスのトライアルレーサーは、1960年代から眠りについていた。だが2010年に、ヒストリック・スポーツ・トライアル協会(HSTA)を立ち上げたマーティン・ハリデー氏が発見。徹底的なレストアが施され、現在に至る。

ボディを復元したのは、英国のローチ・マニュファクチャリング社。可能な限りオリジナルが保たれているが、ボンネットはボロボロで再生できず、新品に置き換わった。本来のボンネットは、ハリデーのガレージに誇らしく飾られている。

ロータス・シックス・トライアルレーサー(1948年式/英国仕様)
ロータス・シックス・トライアルレーサー(1948年式/英国仕様)

サイドバルブのE93Aユニットとトランスミッションも、オリジナル。「ネメシス・レーシング社のジェレミー・ベネットさんが、ブロックのヒビを治すなど、素晴らしい仕事をしてくれました。彼は、古いF3用エンジンのリビルドも手掛けているんです」

ハリデー自身は、リアアクスルを再生させた。「新古品のクラウンホイールとピニオンは、以前から所有していました。ハーフシャフトは弱いことを知っていたので、高品質な素材で作り直してもらっています」

車重は、オースチン・セブンより軽く、小さなフロントブレーキでも制動力は驚くほど。ビーム式のフロントアクスルはシンプルで、軽く足まわりを仕上げている。

ハリデーが路肩の斜面へシックスを進めるが、苦労なしで走破する。柔らかくストロークの長いサスペンションが、しなやかにタイヤを接地させる。凹凸の多い路面で運転してみると、足まわりが柔軟に動く様子を感じ取れる。

驚くほどフレンドリーなクラシックカー

レストアは2022年に終了し、HSTAが主催するヘリテージ・スポーツ・トライアルレースへ出場。HEL 46としては58年ぶりの競技だったが、見事に優勝を掴んだ。2023年4月にも、別のトライアルレースで勝利している。

「現在モータースポーツに参加している中で、優勝を残した最古のロータスだと思いますよ。自分と妻は80歳になりますが、その2人が乗る70年も昔のクルマとしては、悪くない成績だと思いませんか?」

ペール・ブルーのロータス・シックス・トライアルレーサーと、アルミニウム・シルバーのロータス・シックス・ロードレーサー
ペール・ブルーのロータス・シックス・トライアルレーサーと、アルミニウム・シルバーのロータス・シックス・ロードレーサー

乗り心地は柔らかく、シフトチェンジは簡単。確かに、驚くほどフレンドリーなクラシックカーだ。トライアルレース用の備えとして積まれた、ジャッキとエアポンプ、2本のスペアタイヤが、不思議な組み合わせにも見える。

対して、アルミニウムの素地が鈍く輝くロードレーサーは、かなりシリアス。トライアルレースのシックスと見比べると、長く広く低く、ブガッティ・タイプ35にも似た雰囲気を漂わせる。

フロント・トレッドの方が、リアより広い。前後のタイヤは、逆ハの字のポジティブキャンバーで支える。

飛んでくる虫の一部を除ける程度の、小さく立ち上がったエアロスクリーンの後ろに、体を滑り込ませる。適度にタイトで、居心地が良い。

エンジンターン模様が施されたダッシュボードの中央に、美しいスミス社製のレブカウンターが納まる。エルバ・エンジニアリング社製のオーバーヘッド・バルブ・キットが組まれ、エンジンは8000rpmまで許容するという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ポール・ハーディマン

    Paul Hardiman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ロータス・シックスの前後関係

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