メルセデス・ベンツW108/W109型 殆どの部品は入手できる! UK版中古車ガイド(2) 複雑なサス故障にご注意

公開 : 2024.05.12 17:46

メルセデス Sクラスのご先祖が、W108/W109型 優雅でモダンな見た目 縦に長いヘッドライトが特徴 エンジンは長寿命 複雑なサスの故障に注意 英国編集部が魅力をご紹介

エンジンは長寿命 複雑なサスの故障に注意

Sクラスの前身となった、メルセデス・ベンツW108/W109型。定期的なメンテナンスを怠らなければ、直6でもV8でも、エンジンは長寿命と考えて良い。SOHCのカムはチェーン駆動で、こちらも堅牢だ。

V8エンジンでは、チェーンのたるみが内部の損傷につながる。交換作業は難しくないため、早めの対策が吉だろう。

メルセデス・ベンツ280 SE(W108型/1967〜1972年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ280 SE(W108型/1967〜1972年/英国仕様)

キャブレターも経年劣化するものの、知識があればメンテナンスは難しくない。ボッシュ社製のインジェクションは堅牢。修理は可能だが、高く付く。欧州では、エタノール混合ガソリンへ対応した、燃料ホースへの交換も一般的といえる。

メルセデス・ベンツ独自の4速オートマティックは、一般的なユニットではなく、ポンプとタービンを用いた流体カップリング式。欧州ではマニュアルより多い。アメリカ向けに、4.5L V8エンジンにはトルクコンバーター式の3速が組まれていた。

マニュアルは、4速が標準で高耐久。1969年式以降の6気筒エンジン版には、オプションで5速も設定されていたが、これを選んだオーナーは少なかった。4速MTの場合、オプションでフロアシフトへ変更も可能だった。

W108型のリア・サスペンションには、ハイドロニューマチックを用いた車高調システムが組まれている。荷室へ荷物を積むと、一定の高さへ持ち上げボディを水平に保ってくれる。リア側が沈んで見える場合は、このシステムが故障している証拠といえる。

複雑な機構が故に、不調は珍しくない。スプリングを組んだシステムへ、置換されることも多い。

殆どの修理部品は入手可能 でも高価

上級仕様だったW109型では、エンジンの回転を利用したエアポンプが圧力を送る、セルフレベリング機能付きエアサスペンションが標準。こちらも、正常に機能するか試乗で確かめたい。

ヒーターファンはダッシュボードの内部にあり、修理作業は大掛かり。エアコンから時計まで、電装系の調子はすべて確認しておきたい。

メルセデス・ベンツ280 SE(W108型/1967〜1972年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ280 SE(W108型/1967〜1972年/英国仕様)

W108型もW109型も、生産終了から半世紀以上が過ぎている。現存する車両は、各部のサビ補修を受けていて不思議ではない。その作業は丁寧か、じっくり観察したい。

ボディパネルの内側に不自然な波打ちがないか、ドアやトランクリッドなどの隙間が均一に揃っているかも観察したい。事故に遭遇すると、間隔が不揃いになりがちだ。

メルセデス・ベンツは、殆どの部品とボディパネル、クロームメッキ・トリムを今でも提供している。部品に困ることはないとしても、価格は安くない。レストア前提で購入する場合は、どの程度部品代が必要になるか、概算でも検討しておくと安心だろう。

乗りながら長期間楽しみたいと考えるなら、排気量にこだわらず、可能な限り状態の良い例を探した方がベター。車両価格は高めでも、最終的に維持コストを抑えられる可能性が高いはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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