意外にも経済的なPHEV 10選 高価なのに売れている上級ハイブリッド車、合理的な選択肢

公開 : 2023.07.30 18:05

EVとエンジン車の中間的存在として注目のPHEV。通常のエンジン車よりもやや高価ですが、欧州ではよく売れているカテゴリーの1つです。その人気の理由を解説しながら、特筆すべきPHEVモデルを紹介します。

人気の理由、特筆すべきモデルを解説

EVと内燃エンジン車の中間的な存在といえるPHEV(プラグインハイブリッド車)は、従来車に比べてやや高価ではあるものの、欧州を中心に大きな需要がある。その人気の背景には、行政による手厚い補助金やサポートといった側面もあり、例えば英国の「社用車」制度では、PHEVの税金負担が低いため購入しやすいということが挙げられる。

もちろん、PHEVならどんな車種でも優遇を受けられるというわけではなく、電気のみで走行できる距離などに応じて支払う金額が異なる。英国の国税庁にあたるHMRCは、雇用主が従業員に車両を提供する場合、BIK(現物給付)として車両価格のうち一定額を課税する制度を導入しており、これが電気のみでの走行可能距離に応じて変動する。低いものでは5%、高いものでは14%と大きく差が開く。

合理的かつ現実的な選択肢となっているPHEVモデルを紹介
合理的かつ現実的な選択肢となっているPHEVモデルを紹介

つまり、英国ではできるだけ長くエンジンを止め、排出ガスを出さずに走行できる車両を優遇しているということ。当然、自動車メーカーもこうした行政の対応を見ながら車両開発に取り組んでいるはずだ。現実問題として、ロンドンをはじめとする欧州の一部都市では、排出ガスの多い車両に対して通行料金を課すところもある。

今回は、こうした事情を踏まえて、電気のみでの走行可能距離(EV走行距離)が長く、また優れた性能を誇るPHEVを10台ピックアップした。英国特有の社用車税制をベースにしてはいるが、単に節税対策としてではなく、1台のクルマとして注目に値するものを集めた。PHEVの購入を検討されている方にとって、少しでも参考になれば幸いだ。

1. メルセデス・ベンツGLC 300de

長所:卓越したEV走行距離、5%のBIK優遇、キャビンの広さと多用途性

短所:高価、ハイブリッドシステムの重量が乗り心地とハンドリングに悪影響

1. メルセデス・ベンツGLC 300de
1. メルセデス・ベンツGLC 300de

メルセデス・ベンツは直近の5年間で、PHEVに多大な投資を行い、現在では8%の英国BIK優遇を受けられるようなモデルを複数擁し、ライバルの中でも羨望の的となっている。

その筆頭は、2022年末にマイナーチェンジしたミドルサイズSUVのGLCだ。駆動用バッテリーを大型化したことで、EV走行距離は欧州WLTPサイクルで133kmを達成できるようになった。PHEVでこれ以上の距離を実現したのは、今のところポールスター1だけである。

英国向けのメルセデス・ベンツGLC PHEVにはガソリンとディーゼルがあるが、CO2排出量が少ないのは後者で、WLTP燃費も240km/lを超えている。ただし、周知のことではあるが、日常使用でこの燃費を再現するのは困難である(不可能ではないかもしれないが、短距離の使用とバッテリーの満充電に依存する)。

これまでのAUTOCARのテストでは、実際のEV走行距離は95kmに近いことが確認されている。また、31.2kWhバッテリーの重量は、乗り心地とハンドリングに若干の負担をかける。ボディコントロールは一般的なミドルサイズSUVよりわずかにソフトで、乗り心地はややもろい。

価格もかなり高く設定されているが、英国では節税によって総コストが抑えられるため、おそらく当分の間は大きな障壁にはならないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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