最新技術を先んじて投入 メルセデス・ベンツSクラス(W221) 英国版中古車ガイド V12のLもお手頃に

公開 : 2023.03.24 08:25

2000年代初頭の新基準といえた、W221型Sクラス。今でも通用する高級感を味わえる中古車の魅力と注意点を、英国編集部がご紹介します。

231psのV6から611psのV12まで

ロールス・ロイスは別枠といえるが、メルセデス・ベンツSクラスほど一目置かれるラグジュアリー・サルーンは他に存在しないだろう。特に第5世代となるW221型は、多くの要人に愛された。近年では、すっかり目にする機会が減ったけれど。

5代目の栄光は昔のものになってしまったが、まだ中古車市場には流通している。しかも、驚くほどの低価格で。英国の場合、約3000ポンド(約48万円)で売りに出ている例もある。V8エンジンの上級グレードでも、1万ポンド(約161万円)以下がある。

メルセデス・ベンツ S 600 L(W221/2006年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ S 600 L(W221/2006年/英国仕様)

Sクラスらしく、エンジンのラインナップは幅広い。英国仕様では、S 280が搭載した231psの3.0L V6自然吸気ガソリンからS 65 AMGが搭載した6.0L V12ツインターボ・ガソリンまで選べる。

新車当時、英国で人気を集めたのはS 320 CDIとS 350 CDIが搭載した、3.0L V6ディーゼルターボだった。最高出力は235psと271psを発揮したが、前者の方はフェイスリフト後に消滅している。

とはいえ、折角のお手頃な中古車なのだから、V型12気筒エンジンを検討するのも悪くない。S 65 AMGでは最高出力611psを誇り、約2.2tもある大きなボディに、0-100km/h加速4.4秒という俊足を与えている。

フェイスリフト前で自然吸気の6.2L V8を積み、フェイスリフト後にはツインターボの5.5L V8になったS 63 AMGでも、0-100km/h加速は5.0秒を切る。最高出力は500馬力を軽く超えていた。

メルセデス最新の技術を真っ先に投入

動力性能だけでなく、乗り心地も素晴らしい。エアサスペンションが巧みに路面の不整を吸収し、車内を教会のような静寂に保つ。シートも豪華極まりなく、初代オーナーが希望していればマッサージ機能も備わる。

操縦性も悪くない。スポーツカーには並ばないにしろ精度は高く、シャシーバランスに優れ、カーブでの落ち着きは秀逸。ステアリングホイールは軽く回せるが、手のひらへ伝わる感触も充分にある。

メルセデス・ベンツ S 600 L(W221/2006年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ S 600 L(W221/2006年/英国仕様)

メルセデス・ベンツの高い技術力も再確認できる。Sクラスといえば、同社最新のシステムが真っ先に投入されるモデルとしても有名だ。

2世代前ながら、アクティブ・レーンキーピング・アシストにアクティブ・ブラインドスポット・アシスト、レーダー・クルーズコントロールなど、多彩な運転支援システムが実装されていた。最新モデルと文字の上では遜色ない。

そのぶん、メンテナンスに求められる費用も小さくない。有能なエアサスペンションも、メンテナンスフリーで済むわけではない。

燃費も、小さなハッチバックの比ではない。小排気量のディーゼルターボなら、14.0km/L近く走る。だが、V8やV12エンジンを選ぶなら、平均で7.0km/L程度は覚悟したい。税金や保険もサイズ相応に高くなる。

それでもW221型の車両価格を考えれば、修理費用に目をつぶれなくはないだろう。友人にドライバー役を頼んで、素敵なスーツを着て、リアシートを堪能するという楽しみ方もできる。もちろん、フロントシートでの運転も悪くない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    オリバー・ヤング

    Oliver Young 

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

メルセデス・ベンツ Sクラスの人気画像