【大きいことは良いことだ】ジャガーMk VIIとMk Xを振り返る 英国のビックサルーン 後編

公開 : 2021.06.05 17:45

戦後のフラグシップ・サルーンとして登場したMk VIIと、真新しいデザインで見違えたMk X。ビッグ・ジャガーの2台を、英国編集部が振り返ります。

1950年代のビッグサルーンは珍しい

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
1964年に登場した4.2LエンジンのジャガーMk Xは故障も少なく、39.0kg-m/4000rpmの最大トルクで力も充分。ひと回り小さい、3.8LのMk 2と同等の直線加速を披露した。

ステアリングやブレーキも、新設計で改善。ボルグワーナー社製のATに加え、洗練され変速を容易にするシンクロメッシュを完備した、MTが選べたのも魅力の1つだろう。

ジャガーMk VII M(1954〜1956年/英国仕様)
ジャガーMk VII M(1954〜1956年/英国仕様)

今回ご登場願ったジャガーMk Xは後期モデル。ジャガーMk VIIは1956年式、最終型のMだ。どちらも、ジャガーの専門ガレージ、ロバート・ヒューズ社が保有している。これまで30年以上、ジャガー中心に話をしてきた経験を持つ。

ガレージを営むヒューズにとっても、1950年代のビッグサルーンは珍しいという。とはいえ、これまでに5〜6台は自身も所有してきたという。

Mk VII Mは、1954年9月に発表されたMk VIIのマイナーチェンジ版。フロントフェンダー上のウインカーと、バンパー上のフォグライトなどが見分けるポイントとなる。

Mとして一番の特長になるのが、専用のカムで従来より30ps増しの192psを獲得したエンジン。輸出が順調に伸びたのはMk VII Mの登場以降で、英国の路上でもそれなりの台数を目にするようになった。

ボルグワーナー社製のDGユニットと呼ばれるATは、1953年から採用。フロントはベンチシートだ。腰を下ろすと着座位置はかなり低く感じられる。リアガラスは横長で小さく、視界は悪いもののリアシートはプライベート感が強い。

市街地でのマナーを優先した走り

小さなワイパーの付いた、フロントガラスが目前にある。巨大で冷たい4スポークのステアリングホイールを握ると、雇われた運転手のような気分になる。でも滑らかなレザーと艷やかなウッドパネルは、贅沢で幸せな気持ちにしてくれる。

ルーフライニングは上質なクロス張り。メーターの照明も良い雰囲気だ。

ジャガーMk VII M(1954〜1956年/英国仕様)
ジャガーMk VII M(1954〜1956年/英国仕様)

XK型のエンジンは、ボタンを押すとすぐに目を覚ました。ATのセレクターの動きも良く、しっかりキビキビと変速してくれる。ニュートラルではフロアがハミングするようにノイズを立てるが、走行中の変速はスムーズ。

筆者が以前運転したモス社製のMTを載せたMk VIIの記憶より、運転しやすい。加速の勢いや燃費の数字を知ると、ATはさほど効率的ではないようだが。

低速コーナーや駐車時は、ステアリングホイールの操作が忙しい。それでも、ある程度の速度域に到達すれば扱いやすく、直進性も優れている。市街地でのマナーの方が、スポーツサルーンとしての走りより優先されている。

少しペースを速めての運転も楽しい。だがボディロールは大きく、タイヤからはスキール音が聞こえ、優しく運転するべきだと思わせる。優雅な見た目のように。

他方、ツートンカラーで仕上げられたMk X 4.2は、1965年式。1971年まで英国東部のグリムスビーに住む女性が最初のオーナーだったが、友人の男性へ譲ったのだという。「彼は、それから倉庫にしまっていたようです」。ヒューズが説明する。

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