【992型GT3のベスト】ポルシェ911 GT3ツーリングへ試乗 深く記憶に刻まれる 前編

公開 : 2021.07.17 08:25

最新992型ポルシェ911 GT3へ追加となったツーリング。大きなウイングの載らない、公道へ若干シフトしたGT3を、英国編集部が評価しました。

エレガントさに見え隠れする獰猛さ

text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
4年ほど前、ポルシェは991型911 GT3へツーリング・パッケージを設定した。最も羨望を集めるパフォーマンスカーの1台が、誕生した瞬間だった。

内容は比較的シンプル。宝石のように磨き込まれたエンジンとMT、シャシーを備える911 GT3を持ってきて、派手なリアウイングを降ろし、アルカンターラではなく滑らかなレザー内装を与えていた。

ポルシェ911 GT3ツーリング(992型/英国仕様)
ポルシェ911 GT3ツーリング(992型/英国仕様)

その結果、慎ましやかな見た目の、非常に特別な911が完成した。英国では、アウディRS6アバントのリアから、そのエンブレムを外してしまう人も多い。この手の、ひけらかさない見た目を好む人は少なくない。

991型GT3のツーリング・パッケージが見事だった理由の1つが、一般道との愛称が素晴らしかったこと。多くのドライバーにとって、GT3ツーリング・パッケージは、991型だけでなく、モダン911の最高峰だったと思う。

そして、最新の992型にもGT3ツーリングが登場した。991の過去を振り返れば、当然といえる。992型発表の初期の段階から、ポルシェはその需要があることを認識していた。

改めて911 GT3ツーリングを眺めると、血圧が上がる。992型のエレガントなシルエットに加えて、車高は限りなく低い。ディティールには、獰猛さが見え隠れする。

センター2本出しのエグゾーストに、ワイドなリアディフューザーと穴の空いたカーボンファイバー・ボンネット。アグレッシブなフロントバンパーやセンターロックのアルミホイールなど、すべてがGT3そのものだ。

メカニズム関係は通常のGT3と同じ

マット仕上げのメッシュが、ボディに開いた穴のあちこちに張られている。少し安っぽくも見えるが、公道では許されないような、戦闘機的な勢いを漂わせる。

試乗車のボディは落ち着いたブラックだったが、992型のGT3ツーリングは、明らかに991型のそれよりも好戦的。低い位置に据えられたカーボン製バケットシートが、乗り込むだけでドライバーの臨戦態勢を整えようとしてくる。

ポルシェ911 GT3ツーリング(992型/英国仕様)
ポルシェ911 GT3ツーリング(992型/英国仕様)

標準装備はスポーツシート・プラス。だが、約13万ポンド(2002万円)を911につぎ込もうとしているなら、918スパイダー由来の快適でサポート性に優れるバケットシートも選びたくなるに違いない。英国価格は3790ポンド(58万円)だ。

メカニズム関係は通常の、というべきか、GT3と同じ。明確な違いは、スワンネックの大きなリアウィングが後ろに載っていないこと。また、クラブスポーツ仕様でツーリングはオーダーできないため、ロールケージは組めない。

エンジンは、GT3専用の3996cc自然吸気フラット6。気筒毎に専用のスロットルボディが載り、インテーク内にパルス波を発生させることで、若干の過給効果を得ている。

レブリミットは9000rpm。510ps/8400rpmの最高出力と、47.8kg-m/6100rpmの最大トルクもGT3と同じ。排気量1000cc当たりの馬力は127psに達し、フェラーリ812コンペティツィオーネと同値だ。

トランスミッションは、デュアルクラッチATの7速PDKか、17kg軽い6速MTが選べる。リミテッドスリップ・デフと、ブレーキによるトルクベクタリング機能も装備される。カーボンセラミック・ブレーキも標準で付く。

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