名機4A-GEに軽いFRシャシー 若者も吸い寄せるAE86 トヨタ・カローラ・レビン 後編

公開 : 2022.05.14 07:06

英国でもネオクラシックとして支持を集める、AE86型のレビン。英国編集部が、夜の街でその魅力に迫りました。

日常的な速度でも生き生きとしている

現存するAE86型のトヨタカローラ・レビンやスプリンター・トレノの殆どは、何かしらモディファイされている。英国トヨタのヘリテイジ車両ですら、排気系のほかにストラットタワーバーとロワースプリングが組まれ、ボディ補強が施されている。

乗り心地は若干跳ねる印象ながら、積極的に走りたい小さなスポーツクーペには合っている。そして、すぐにその本性が見え始める。

トヨタ・カローラ・レビン(AE86/1983〜1987年/英国仕様)
トヨタ・カローラ・レビン(AE86/1983〜1987年/英国仕様)

パワーアシストの備わらないステアリングは、操舵時の重さや感触が素晴らしい。シフトフィールも良好で、操作系のすべてが調和しているように感じられる。聴き応えのあるエンジンサウンドを、堪能しやすい。

街灯が並んだ夜の都心を走るのに、完璧な組み合わせに思える。日常的なスピードでも、AE86型のカローラ・レビンは命が宿ったように生き生きとしている。

もちろん、サーキットでもその能力はいかんなく発揮された。各地の峠道でドライバーの心を強く掴んだだけではない。欧州のモータースポーツでも、優れた戦いを披露した。

1984年以降、カローラ・レビンはヨーロッパツーリングカー選手権へ参戦。トヨタはマニュファクチャラーズ・タイトルを3シーズン目の1986年に掴んでいる。メルセデス・ベンツ190E コスワースや、BMW E30 M3といった強敵を打ち負かしながら。

同時期には、英国サルーンカー・チャンピオンシップへも参戦。クリス・ホジェッツ氏やアラン・ミンショウ氏、バリー・シーン氏というレーシングドライバーがステアリングホイールを握った。

欧州のレースでも活躍したAE86

なかでも、トヨタのワークスチームで最も成功を収めたのが、クリス・ホジェッツ氏。1986年シーズンでは9戦中8勝を果たし、グループCのクラス優勝を獲得している。プジョー205 GTiに、ブランズハッチで勝利を1度譲っただけだった。

その頃、グループAやグループBで戦っていたマシンは、フォード・シエラ RSコスワースやフォード・エスコート RSターボなど。そんな強敵と比べても、クラス内での最終的なポイント・ランキングで勝るほどの強さだった。

トヨタ・カローラ・レビン(AE86/1983〜1987年/英国仕様)
トヨタ・カローラ・レビン(AE86/1983〜1987年/英国仕様)

1987年からは、英国ツーリングカー・チャンピオンシップへレースが一新。グループ規定も見直された。カローラ・レビンはそこでも強さを発揮。同クラスのグループDを圧倒しただけでなく、グループBのアルファ・ロメオ75 ターボなどとも渡り合った。

そんなモータースポーツでの活躍とは裏腹に、欧州ではカローラ・レビンやスプリンター・トレノは注目度が低いままだった。トヨタMR2日産スカイラインなどと比べて、馬力の数字が小さかったためだろう。

しかし、日本のポップカルチャーが波及し、近年はカルト的な支持を集め始めている。その引き金となったのが、ドリフト。1980年代にクルマ好きの若者の間で広まり、ベストタイミングで登場したFRのレビンやトレノは、絶好の選択肢になった。

しげの秀一氏が描いた漫画「イニシャルD」では、豆腐店の少年、藤原拓海が乗るスプリンター・トレノ GTアペックスが登場。群馬県の峠を舞台にしたドリフトバトルは映画にもなり、世界中へ広まった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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