トップ争いに加われる実力 日産アリア 63kWh アドバンスへ英国試乗 高質感の走りと車内

公開 : 2022.08.27 08:25

渾身のBEVクロスオーバーといえるアリア。リーフやデュアリスの知見が活きる、魅力的なモデルだと英国編集部は評価します。

英国の傷んだ路面でも優れた印象は変わらず

日産アリアが発表されたのは2020年だったが、スウェーデンとスペインでのプロトタイプ試乗を経て、ようやく英国の一般道での運転が許された。日産としては待望のゼロエミッション・モデルに違いない。

最大のライバルとなるのは、同じく中型クロスオーバーのトヨタbZ4X。英国の傷んだ道路環境で、どんな体験を与えてくれるのだろうか。

日産アリア 63kWh アドバンス(英国仕様)
日産アリア 63kWh アドバンス(英国仕様)

欧州本土の滑らかな路面では、落ち着いた乗り味を披露してくれた。同等の内燃エンジン・モデルと比較してBEVは車重が重く、サスペンションも引き締める必要がある。競合との差別化という点でも、洗練性は重要な要素となる。

果たして日産アリアは、ロンドンの市街地へ滑り込む前から、英国でも優れた印象のままだった。アスファルトの剥がれた穴や、速度抑止用のスピードバンプ、橋桁の継ぎ目などを、このクラスとして期待する通りに滑らかに処理していた。

その間、車内は至って静か。サスペンションノイズも目立たない。エンジン音が聞こえてこないにも関わらず。

ボディ剛性も高く、路面が酷く荒れた区間を走行して、シートベースとステアリングコラムに僅かな振動が伝わる程度。大きな段差を超えても、不快な衝撃が車内へ届くことはなかった。

英国の市街地でも、身構えることなく運転できる。日産キャシュカイ(デュアリス)や日本未導入の2代目ジュークと、同じように走り回れる。

同クラスのトップ争いに加われる実力

試乗したアリアはシングルモーターの前輪駆動。フロントに、218psと30.5kg-mを発揮する駆動用モーターを搭載する。発進加速は鋭く、クルージング時には余力を感じる。パワーデリバリーが滑らかで快適だ。

この手のBEVでスポーツ・モードを選択すると、ドライバーへのアピールを誇張したような不自然さが出ることも多いが、アリアは違う。より穏やかに展開され、その爽快さから自然と笑顔が湧き出てきた。

日産アリア 63kWh アドバンス(英国仕様)
日産アリア 63kWh アドバンス(英国仕様)

もしアリアで長距離ドライブを計画するなら、Eペダル・モードを積極的にオススメしたい。回生ブレーキが強く働き、アクセルペダルだけで発進から停止までをまかなえる、ワンペダル・ドライブが可能になる。

運動エネルギーを効果的に電気エネルギーとして回収するだけでなく、明確に加減速が緩やかになり、疲れも抑えられる。ただし、減速感は線形的ではない。信号の手前でアクセルペダルをどの程度緩めるべきか、多少の慣れが必要だと感じた。

そのEペダル・モードでの停止直前以外、アリアのドライブトレインは入念に調整されており、極めて直感的。リラックスした運転スタイルへ自然と落ち着く。

航続距離は最長402kmがうたわれ、競争力は充分にある一方で、急速充電能力は130kWとそこまで高くはない。それでも、同クラスのBEVクロスオーバーのトップ争いに加われる実力は備わっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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