日本未導入の1.6L版 日産マイクラ(マーチ) 160SR 英国版中古車ガイド ニュルで最終調整

公開 : 2023.10.19 19:05

日本未導入だった3代目マーチの高性能仕様 引き締められたシャシーで鋭い操縦性 英国編集部が中古車でご紹介

ニュルブルクリンクで最終的な微調整

日産マーチ(マイクラ)には少し特別な思い入れがある、という読者もいらっしゃるだろう。残念ながら現在の日本では、現行の5代目(K14型)を購入することはできない。だが、約20年前の3代目(K12型)にも、欧州でしか買えない特別なマーチがあった。

2005年から2008年にかけて、英国日産が提供していたのが、マイクラ 160SRだ。途中でマイクラ・スポーツSRへ一時的に改名されているが、160が示したのは馬力ではない。4気筒エンジンの排気量、1600ccへちなんだものだった。

日産マイクラ(マーチ) 160SR(K12型/2005〜2008年/英国仕様)
日産マイクラ(マーチ) 160SR(K12型/2005〜2008年/英国仕様)

現実的には113psと、期待ほどの最高出力は発揮しなかったものの、車重は約1tと軽量。0-97km/h加速を9.8秒でこなした。

それ以上に当時のドライバーを喜ばせたのが、コーナリング。シャシーのチューニングを手掛けたのは、英国のクランフィールドに位置する日産テクニカルセンター。Z33型フェアレディZ、350Zを欧州仕様にチューニングした、精鋭によるものだった。

彼らはノーマルのマイクラをベースに車高を落とし、スプリングレートをフロントで20%、リアで10%強化。リアのトーションバーは55%硬くなり、フロントのアンチロールバーも引き締めた。最終的に、ロール剛性は27%向上している。

さらに、トラクションコントロールを追加し、ステアリングの重み付けをプラス。ドイツ・ニュルブルクリンク・サーキットで、最終的な微調整が加えられた。

適度にホットで実用的なハッチバック

スタイリングは、テールゲート上のスポイラーとフロント・フォグライトなどで差別化。16インチの専用アルミホイールで、足元は飾られた。キャビンには、スポーツシートが2脚。ちなみに、パーキングセンサーも備わる。

完成したマイクラ 160SRの英国価格は、2005年でも安価といえた1万ポンド以下。「手頃な価格で運転が楽しく、装備は充実。適度にホットで、実用的なハッチバックをお探しなら、期待へ応える1台になります」。と、当時のAUTOCARは評価している。

日産マイクラ(マーチ) 160SR(K12型/2005〜2008年/英国仕様)
日産マイクラ(マーチ) 160SR(K12型/2005〜2008年/英国仕様)

3代目マイクラがこれほどの評価を得るとは、発表当時は誰も想像しなかっただろう。

残念なことに、マイクラ 160SRは英国でも極めて希少。もしこれに近い3代目をお探しなら、SXグレードが良いだろう。アルミホイールとスポイラー、アルミニウム製シフトノブ、フォグライトなどを装備し、2004年に登場している。

また英国仕様では、SVEも悪くない。パーキングセンサーやリモートロックなどが装備される、上級グレードだ。

新車当時、3代目マイクラの個性的なスタイリングには、賛否両論があった。日産は、見た目を優先して開発したことを認めていたが、少し未来を先取りしすぎていたのかもしれない。160SRのエンブレムが誇らしく輝く後ろ姿は、今では確かに格好良く見える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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