地方の道路整備を急げ 英国政府、インフラ予算に大きな偏り 「道路作らない」地域も

公開 : 2023.10.19 18:05

・地方の道路整備をめぐる問題。英国政府に提言。
・5兆円近い戦略予算の約8割がイングランド南部に集中。
・将来的なコスト増を見込み、道路網改良を急ぐ。

戦略予算の8割がイングランド南部に集中

交通網を整備すべき地域があるのに、なかなか思うように進まない……。英国では最近、地方における道路の改良を巡って政府の問題点を指摘する声が上がっている。

英国政府へ助言を行う独立アドバイザー、NIC(国家インフラ委員会)は、イングランド全土の接続性と物流を改善するために、北部とミッドランド地方の道路網改良を優先すべきであると主張している。

英国の物流インフラを維持するため、道路網改良に力を入れるべきとの声が上がっている。
英国の物流インフラを維持するため、道路網改良に力を入れるべきとの声が上がっている。    AUTOCAR

NICによると、5年間で計274億ポンド(約5兆円)を投じる第2次道路投資戦略(RIS2)のうち、22%しか、これらの地域をカバーしていないという。つまり、8割近くが南部に集中していることになる。NICはこれについて「不振地域を支援するという方針と矛盾している」と指摘し、また国や地域の生産性目標に沿っていないと述べた。

NICは国家のインフラを評価する『第2次国家インフラ評価報告書(Second National Infrastructure Assessment)』の中で、地域間の取引や主要物流拠点にとって最も重要なルートに焦点を当て、どこで、どのように接続性を改善できるかについて「体系的」な分析を行うべきであるとしている。

続いて、「これらの重要なルートのうち、所要時間の点でパフォーマンスが低い区間や、既存のネットワークでリンクが欠落している可能性がある区間を特定すること」と主張。

道路、鉄道、水道、電力、デジタルインフラを網羅し、2年の歳月をかけて作成された202ページの同報告書には、今後30年間に実施すべき道路改良の目標マップ案も含まれている。接続性の悪い地域として、ブラッドフォード、リーズ、キングストン・アポン・ハルの名が上がった。

ミッドランドと北部の道路網の多くは脆弱で、改良の必要があると考えられている。NICのジョン・アーミット会長は、英国政府、地方指導者、高速道路管理局は、どこの機能強化に重点を置くべきかを決める必要があると述べた。

「わたし達は、主要な場所を結ぶ旅客・貨物の需要が大きい、ネットワーク上で最もパフォーマンスの悪いルートをいくつか特定しました。進めるべき適切な計画を見極めるためにさらなる作業が必要です」

NICはまた、気候変動の影響、耐用年数の限界、需要増加に伴う損耗の増加のため、イングランドの道路の維持・更新コストは、将来的に上昇する可能性が高いと警告。過去の支出レベルでは「現在と同様の結果を出すのに十分である可能性は低い」とした。

そして、政府に対し、2025年から2040年の間に交通インフラ用の予算を現在の年間200億ポンド(約3兆6500億円)から年間280億ポンドに(約5兆1000億円)に増額するよう提言した。

アーミット会長はまた、新しい道路を建設しないというウェールズ政府の決定にも疑問を呈し、「少し不可解な決定だと思います。わたし達は報告書の中で、国内主要都市のインフラ接続について指摘しました。ウェールズは、新しい道路を建設しないこと、あるいは道路の渋滞緩和を実施しないことが経済に与える影響について、独自の判断を下す必要があるでしょう」と述べた。

英国政府は1年以内に報告書に正式回答する予定だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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