クルマ漬けの毎日から

2024.09.19

かつて所有していたフェラーリ308GTB(1976年モデル)を偶然見かけ、ほろ苦い想いがよみがえりました。

フェラーリ308GTBの想い出【クロプリー編集長コラム】

もくじ

グラスファイバーの308GTB
「私のフェラーリ」偶然発見!

グラスファイバーの308GTB

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)

昔、フェラーリ308GTB(1976年モデル)を所有していたことがある。初期のグラスファイバー製ボディの1台で、現在その市場価格は10万ポンド(約1850万円)を超えている。

グラスファイバーのこのフェラーリのことを、イタリア語の「ヴェトロレズィーナ(vetroresina)」という言葉で気取って呼ぶのをまだだれも聞いたことがなかった1980年代半ばに、1万2000ポンド(当時の為替レートで約368万円)で手に入れた。そして、高い買い物をしてしまったと思った。

たとえその初期バージョンが後のスチール製よりも150kg軽量で、パワーもスチール製より少し大きい255bhpであったとしても(当時のフェラーリは、最大出力を高めに計算する傾向があった)。

「私のフェラーリ」偶然発見!

ところで最近、友人と一緒にクルマに乗っていた時、かつて所有していたあの308GTBが走っているのを偶然見かけた。そして、こういう場合によくだれでも言うように、「あのクルマを手元に置いておけばよかった」と私は後悔の言葉を口にした。

だが、ふと我に返り、自分は本気でそう思っているわけではないとすぐに気がついた。じつは手放したあとで、あのクルマを一度運転したことがある。率直に言って、308GTBは少し遅く、またやや粗いと感じた。それに、当時多くのフェラーリがそうであったように、308GTBもインテリアの質感があまり良くなかった。

横に乗っていた友人がこう言った。「運転したいと思わないクルマが、いまも自宅のガレージにずらりと並んでいるところを想像してごらんよ」と。彼は正しい。いま私は、あのオーナーが「私のフェラーリ」を楽しく運転し、所有しつづけてほしいと強く願っている。だが、私に返してほしいとは思っていない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。

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