超希少な初期のFRPボディ フェラーリ308 GTB/GTS UK版中古車ガイド(1) 初の2座ミドV8

公開 : 2025.05.03 17:45

スカリエッティ社のFRPボディで登場した308 GTB 仕様問わず魅了されるV8エンジン クアトロバルボーレで強化 タルガトップのGTSも 現実的なクラシック・フェラーリをUK編集部が振り返る

レアな初期のFRPボディ タルガトップのGTS

フェラーリがV8ミドシップの2+2シーター、ディーノ308 GT4を発売したのは1973年。だが1976年まで販売された美しいディーノ246 GTの正当な後継として、V12エンジンではない初の正式なフェラーリとなったのが、1975年の308 GTBだ。

308 GTBは、グラスファイバー(FRP)製ボディを採用した初のフェラーリでもある。製造したのはイタリアのカロッツエリア、スカリエッティ社で、品質が高く不満は寄せられなかった。しかし1977年後半から、上半分はスチール製へ置換されている。

フェラーリ308 GTS(1977〜1985年/英国仕様)
フェラーリ308 GTS(1977〜1985年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

素材変更の理由は、明らかになっていない。推測するに、製造のしやすさがその1つになったはず。308は、フェラーリとして過去にないほど売れたからだ。

またFRPの塗装は、スチールの塗装より劣化しやすい特性を、フェラーリは好まなかったのだろう。情報によって異なるが、FRPボディの308 GTBは、808台もしくは712台がラインオフしたといわれている。

この通称「ヴェトロレジーナ」308は、希少性と軽さから、近年の人気は特に高い。燃費は優れないもののフィーリングの良いウェーバー・キャブレターが組まれていることも、支持を集める要因となっている。

スチール製ボディへの変更と同時期に、ルーフパネル部分のみ脱着できる、タルガトップの308 GTSも投入されている。外したスチール製パネルは、シートの後方へ格納することが可能だ。

クアトロバルボーレでパワーアップ

308 GTBのホイールベースは、ディーノ246 GTと同値。殆どの自動車評論家は、シャシーバランスと安定性の高さを称えた。だが当時のAUTOCARは、ミドシップの操縦特性とギア比の低いステアリングラックを指摘し、慎重な評価に留まっている。

またリアの荷室へ重い荷物を積むと、高速走行時にフロントが軽くなり、不安定へ転じる可能性をはらんでいた。この改善のため、発売から2年後に大きなフロントスポイラーがオプションで登場している。

フェラーリ308 GTS(1977〜1985年/英国仕様)
フェラーリ308 GTS(1977〜1985年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

F1ドライバーだったジル・ヴィルヌーヴ氏は、モナコからイタリア・マラネロまで308 GTSで定期的に通っていた。タイヤスモークを巻き上げながら到着すると、フェラーリの従業員は大いに喜んだとか。

アメリカのTVドラマ「私立探偵マグナム」では、俳優のトム・セレック氏が演じる主人公の愛車として、レッドの308 GTSが登場。北米だけでなく、世界中での人気を確固たるものにした。

燃費の悪さは、1980年に燃料インジェクション仕様のエンジンが投入され解決。重すぎると指摘されたクラッチユニットも、27kgから17kgへ軽量化されている。1982年には、4バルブヘッドのクアトロバルボーレが登場。パワー不足も解消された。

基本的に、良好に管理されてきた308 GTB/GTSの維持費は法外なものではない。それでも、一部のパーツは高価。余程の自信がない限り、メンテナンスはフェラーリの専門ガレージを頼ることが懸命だろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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