クルマ漬けの毎日から

2025.06.07

クルマの仕様はどのように決定されるのでしょうか? アウディUKでプロダクト・マネジャーを務めるジョー・バッジ氏から、その一端を聞くことができました。

クルマの仕様はどうやって決まる?【クロプリー編集長コラム】

もくじ

無数の組み合わせ 絞り込む
決定要素 データだけではない

無数の組み合わせ 絞り込む

売れ筋のクルマの仕様と価格帯はいったいどのように決まるのだろうかと、疑問に思ったことはあるだろうか? 私はあるが、先日アウディUKでQモデルを担当するジョー・バッジ(一番上の画像)と話し、その仕組みがわかってきた。彼女は長年、この仕事をアウディのさまざまな新型モデルで担当してきた。

アウディSQ8 スポーツバック e-トロン(英国仕様)。昨年クロプリー編集長はこのクルマを長期テストした。

プロダクト・マネジャーと呼ばれるジョー・バッジのような人たちは、どのような商品を提供するかを決定する際に、大きな影響力を持っている(「1000ピースのジグソーパズルを100ピースに減らすような仕事」と彼女は言う)。

プロダクト・マネジャーは、ホイールのデザインとサイズ、ボディカラーの組み合わせ、パワートレイン、インテリアの詳細(オーディオ・計器類・内装オプション・シートの形状)を決定する。

またマーケットから要求があれば、たとえば「ブラックスタイリング」といった、新たなパッケージを設定することもある。オプションをどのような構成にするかも決めるが、これはまさに至難の業。プロダクト・マネジャーの欲しい商品を、工場が製造したがらない場合もある。そんな時は粘り強く交渉するのだ。

決定要素 データだけではない

バッジと話していて非常に面白いと思ったのは、彼女が経験や直感、さらに買い手の好みを個人的に絶え間なく観察し(週末の外出時にもクルマをよく観察)、そのすべてにもとづいて、仕様を設定していると語ったこと。

たとえば、イギリス人はハイスペックのクルマを好むと言われているが、彼女はこうしたデータだけをもとに決定しているわけではないのだ。

ところで、バッジはこの仕事を通して、心から顧客の要望を第一に考えるようになったという。彼女との会話でもっとも印象に残ったのは、このことだった。
「私たちはどのクルマもできる限り魅力的に見せたいですし、どのクルマも最高の残価を持ってほしいと考えています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    小島薫

    Kaoru Kojima

    ドイツ自動車メーカーの日本法人に在籍し、オーナーズマニュアルの制作を担当。その後フリーランスで翻訳をはじめる。クルマはハッチバックを10台以上乗り継ぎ、現在はクーペを楽しんでいる。趣味はピアノ。

関連テーマ

 
 

おすすめ記事