ハースF1退団の衝撃 ギュンター・シュタイナー 「電話1本で解任」のわけ

公開 : 2024.01.28 18:05

10年を振り返って

では、シュタイナーはF1に参入してからの10年をどう見ているのだろうか?

「いい10年だった。いい時も悪い時もあったが、一般的には、人生でこのようなことができるのなら、とてもクールなことだと思う。自分のアイデアでF1チームを立ち上げ、やり遂げる……たとえ最終的にチームを所有することにならなくても、不可能を可能にし、アイデアを持ち、一緒になって作り上げることはクールなことだ。(ハースは)今でも一番若いチームだし、紙切れ1枚から始まったんだ。だから後悔はしていない]

ハースの2023年型マシン「VF-23」
ハースの2023年型マシン「VF-23」    ハースF1

デビュー戦で6位入賞を果たした事実は、誰も否定できない。シュタイナーはハイライトを尋ねられると、こう答えた。「それは明白だ」

「この構成ではあり得ないと誰もが言っていたのに、それが現実になった。最初のテストでは、適切なタイミングに適切な場所にいた。最初のレースでも、適切なタイミングに適切な場所にいた。そして、問題なくレースに臨み、ポイントを獲得した」

「自分にもできることがあるんだと証明されるし、それ以降は当然、日々の課題も出てくる。かなり順風満帆だったと言えるが、その後コビッドに見舞われ、すべてが難しくなっていった」

次の仕事は?

別のF1チームの代表の仕事はありそうにないし、仮にオファーがあったとしても、彼は雇われの身であり、ハース時代のような自主性を持つことはないだろう。

シュタイナーはすでにメディアに引っ張りだこで、昨年は米テキサス州オースティンで開催されたNASCARを視察した際、テレビの評論家という仕事を引き受けた。

「試してみてよかった」と彼は言う。

「1、2か月以内で決断を急ぐつもりはない。何が起こるか、どうなるか見てみるよ。やりたいことを選べるとは言わないが、いくつかの選択肢はあると思う。そして最終的には、自分の好きなことをやるだろう」

有名人になることに

2019年3月にF1ドキュメンタリーシリーズ『Drive to Survive』がNetflixで初放送されて以来、シュタイナーは番組の主役の1人であり、その真面目な姿勢とカラフルな言葉遣いで際立っている。

本人は番組を見たことがないと言うが、彼の社会的評価を上げたことは間違いない。

ギュンター・シュタイナーはメディア露出が増え、一気に知名度が高まった。
ギュンター・シュタイナーはメディア露出が増え、一気に知名度が高まった。

新たに得た名声については、「楽しんでいるわけではない」と語る。「一度評価を得た以上、元に戻すことはできない。元に戻すには、完全にトーンダウンして、嫌なやつになるしかないね!」

「楽しむのは難しいが、有名人になるために毎朝起きるわけじゃない。そんなことはしていない。たまたまそうなったんだ。今、人々はわたしと話したがっているのだから、鏡の前に立って自分を良く見せようとは思わない」

「どこにいても自分を認識される可能性がある、ということに注意しなければいけない。結局のところ、わたしは普段から悪いことはしていないので、誰かに気づかれても気にしないけどね!」

「でも、特に(有名になったばかりの)最初のうちは、人に認識されていることを忘れてしまって、『あの人、なんでわたしを知っているんだろう?』と思うこともあった。後から気づくんだ。しばらくしたら慣れてきたよ」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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