GMが欧州へカムバック 高級銘柄のキャデラックで足がかり 販売はオンライン中心

公開 : 2023.10.08 08:25

アメリカ・ビッグ3の1つ、GMが欧州市場へ復帰 本社はスイス・チューリッヒ バッテリーEVのみを投入 販売はオンラインが中心

EV専門の自動車メーカーとして欧州市場へ復活

アメリカのゼネラル・モーターズ(GM)は、電動大型SUVのキャデラック・リリックをスイスで発売。EV専門の自動車メーカーとして、欧州市場へのカムバックを果たす。

大手自動車メーカーの1つであるGMは、2017年にオペルヴォグゾールをステランティス・グループへ売却。キャデラックとシボレーコルベットを輸入する事業は残されていたものの、実質的に英国を含む欧州市場から、一時的に撤退した状態にあった。

キャデラック・リリック RWD(北米仕様)
キャデラック・リリック RWD(北米仕様)

しかし同社は、2021年にスイス・チューリッヒへGMヨーロッパの本社を設立。ジャクリン・マクエイド氏をトップに据え、バッテリーEVを専門に販売する自動車メーカーとして、着々と復活の準備を整えてきた。

その先鋒を担うキャデラック・リリックは、現地時間の2023年10月6日からスイスで販売が始まる。今後の2年間で、スウェーデンやフランスなど5か国まで事業を拡大するという。今のところ、英国市場に対する計画は明らかになっていない。

リリックは、メルセデス・ベンツEQS SUVやBMW iXなどと競合する大型SUVで、スイス価格は8万2000フラン(約1334万円)からに設定された。北米価格は5万8000ドル(約841万円)となり、ドル/フランの為替レートで見ても、高めに設定されている。

駆動用バッテリーは102kWhと大容量で、航続距離は最長530kmがうたわれる。ツインモーターによる最高出力は、528psとなっている。

販売はオンラインが中心 追ってシボレーも上陸か

GMは、2035年までに世界市場でバッテリーEVのラインナップを完成させる計画を発表している。直近では、このリリックやGMCハマー EVの基礎骨格をなす、アルティアムEVプラットフォームの開発へ多額を投資してきた。

また、従来はオペル/ヴォグゾールというブランドで欧州事業が営まれてきたが、今後はアメリカ市場と同じブランドが展開される。まずプレミアムモデルを主軸にするキャデラックで足がかりを作り、追ってシボレーも導入される可能性が高い。

GMCハマー EV ピックアップ・エディション1(北米仕様)
GMCハマー EV ピックアップ・エディション1(北米仕様)

GMCのハマー EVも、販売を検討しているという。だが車重が重く、欧州では乗用車として登録が難しいという課題がある。

現状では、GMヨーロッパには内燃エンジンモデルを扱うディーラー網が存在しないが、バッテリーEVを主軸にする展開を迅速に進めたいとしている。チューリッヒには実車を展示する「エクスペリエンスセンター」を設けるが、販売はオンラインのみだという。

実際、テスラポールスターなどの様に、オンライン販売が中心になるようだ。それにより、ディーラー網の構築へ多額の費用を投じる必要性がなくなる。ブライトドロップという、バッテリーEVを利用したデリバリーサービスを展開する計画もあるという。

キャデラックは、2023年にル・マン24時間レースへ復帰。LMDhクラスのプロトタイプ・レーシングカーで見事総合3位の座を掴み、世界的な認知度の向上へ繋げている。北米市場での販売も好調で、その良い波に乗りたいところだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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