1980年代を予見:ランチア・デルタ 有能を再実感:アウディ100 ファミリーカーへ新風:プジョー405 欧州COTYの1番を選ぶ(4)

公開 : 2024.02.17 17:45

現在でも優れた能力を実感させる100

車重は、ボディサイズを考えると意外なほど軽い1100kg。1.8L 4気筒と2.2L 5気筒ターボのガソリンに加えて、2種類のディーゼルターボという比較的小さなエンジンで、活発な走りを叶えていた。同時に、クラス最高の経済性も備わった。

さらに、四輪駆動のクワトロも登場。その頃の欧州COTYで審査員長を務めたポール・フレール氏は、このアウディが当面は最も価値あるカー・オブ・ザ・イヤーになるだろうと述べていた。

アウディ100(1982〜1991年/英国仕様)
アウディ100(1982〜1991年/英国仕様)

ご登場願った100は、2.2Lガソリンエンジンにクワトロが組み合わされた、1991年式。後期型で重くなっているが、1350kgとまだ軽い。アウディUKのヘリテイジ部門が管理する車両で、走行距離は24万kmを超えているが、それを感じさせない状態にある。

5速MTは2速のシンクロメッシュがヘタっているものの、ボディやシャシーはソリッド。1983年の欧州COTY選出時に審査員だったレイも、「驚くほど良く走りますね」。と改めて感心する。

スティーブが続ける。「かつて優秀だったクルマが、今でも能力を充分に実感させてくれます。人間工学的には不完全でも、優れた点はしっかり保たれているようです」

マットも賛同する。「大きなステアリングホイールに、踏み応えのあるペダルと手応えの良いシフトレバーが組み合わされた、好感を持てるクルマです。しかも、走りはかなり機敏。当時はだいぶ先進的なモデルに感じたことでしょう」

前輪駆動のファミリーサルーンへ新風

1988年の欧州COTY、プジョー405にも、そんな特長は当てはまる。シトロエンAXと、ホンダプレリュードという優れたモデル以上の実力を備えていた。審査員57名中、54名が最高得点を与えるという、圧倒的な勝利を収めている。

スタイリングを手掛けたのは、ピニンファリーナ社。ボディラインはシンプルで、バランスが美しい。前輪駆動のファミリーサルーンとして、セグメントに新たな風を吹き込んだといえた。

プジョー405(1987〜1995年/英国仕様)
プジョー405(1987〜1995年/英国仕様)

発売当初のエンジンは、燃費の良い1.6Lから1.9Lのガソリンと、洗練された1.8Lと1.9Lのディーゼル。これも、魅力を後押しした。

いい感じに車齢を重ねてきたブルー・シルバーの405は、ポール・グリットン氏がオーナー。後期型のGTXグレードで、オートマティックが載っている。「1988年の欧州では、ファミリーサルーンの典型例でしたね」。とレイが振り返る。

マットもうなずく。「シンプルで運転しやすい。リラックスできる一方で、ステアリングは素晴らしい。この時代のファミリーカーのあるべき姿です。本当に気に入りました。信頼性も高かったと記憶しています」

スティーブも笑顔を崩さない。「車内空間は広く、動的能力は素晴らしい。洗練され、今でも運転しやすく感じられ、好きになるクルマですね。ピニンファリーナの見事なスタイリングを抜きにしても」。405の魅力に疑う余地はないようだ。

それでも、今回の3名の審査員を最も感動させたのは、技術的な水準の高い100だった。1980年代の代表には、ドイツ・インゴルシュタット生まれのサルーンが選ばれた。

協力:アウディUK社

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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