あなたも返金対象かも 「整備してないのに請求」されてない? ビッグモーター事業所行政処分

公開 : 2024.03.03 11:45

過剰請求、ボッタくりはどのように行われたのか?

これら行政処分の対象となった過剰請求はどのように行われたのだろうか?

まずはビッグモーター問題の発端となった「保険修理金の水増し請求」についてだが、こちらは、ニュースなどでも盛んに取り扱われてきたので知っている! という方もいるだろう。

ビッグモーター全国130事業所に行政処分
ビッグモーター全国130事業所に行政処分

例えば、雹(ひょう)災(ピンポン玉サイズの雹が大量に降って、クルマのボディを傷つける)を受けたクルマが入庫してきたとする。雹によってできた損傷をさらに広げて保険修理の利益を水増しするためにゴルフボールを軍手などに入れて車体を叩き、損傷部分を広げる…といった手法である。

わざと傷を作り出し、その修理代金を保険会社に不正に水増し請求することでビッグモーターの板金工場で利益を増やすわけだ。元板金工場の作業員に話を聞いたところ、これらはほぼすべてが保険修理であり一般客の自費修理はないとのこと。

ごくたまに自費修理もあったが、その際はお客さんと相談しながら見積もりを作るとのことで過剰請求はなし。そして板金の過剰請求はすでに保険会社への返金が始まっている。

問題は点検整備の過剰請求である。これは車検整備や定期点検の際の請求となるため、まず保険を使うことはなく一般ユーザーが自費で支払っている請求だ。ビッグモーターでは年間26万件もの車検を行っていたというから、その数はすさまじいものになる。

地方運輸局や国交省は何をもとに「過剰請求」と判断したのか? 3か所の地方運輸局に電話で聞いたことをまとめると、一言でいえば「やる必要のない整備をやったことにして客に請求した」ということになる。

やる必要のない整備や調整をやったことにして請求

例をあげてみよう。車検の検査項目に「サイドスリップ検査」というものがあるが、これはクルマの直進性を測定する検査であり合格の基準は「1m走行して5mmを超えて横にずれてはいけない」である。

ビッグモーターでは検査の結果サイドスリップの数字に問題がなく調整する必要もないにも関わらず、調整したことにして費用を請求していた。

ビッグモーター全国130事業所に行政処分
ビッグモーター全国130事業所に行政処分    加藤博人

他には監査に行って記録簿上の内容と請求書の内容を突き合わせて確認するが、記録簿上では部品を交換していないのに、請求書には部品が交換されたとして計上されている。このような場合も「過剰請求」とみなしているとのことであった。非常に悪質であり、返金されて当然である。

ビッグモーターの公式サイトにある「インフォメーション」にはこれら行政処分に対する対応が記されている。

【今後の対応】

対応に不備のあったお客様に対しては、無料で再整備・点検を実施させていただきます。対象のお客様には順次弊社より個別にご連絡させて頂きます。

当該事業場で車検・整備をご予約いただいておりますお客様に関しても、順次今後の対応をご連絡させて頂きます。(中略)国の認可を受けた指定自動車整備事業者及び自動車特定整備事業者として、責任のある整備等を実施する立場にありながら、このような事態を招いてしまったことにつき、改めて深くお詫びいたします。今後は、お客様からの信頼回復に向けて全社を挙げて尽力して参ります。

・対象の客には個別に連絡し、無料で再整備や点検を実施する。
・国の認可を受けた整備事業者として客からの信頼回復に向けて全社を挙げて尽力する。
まとめるとこのような内容になるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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