【ストリートレースを彩った2台】シボレー・コルベット C2とジャガーEタイプ 後編

公開 : 2020.07.19 16:50  更新 : 2020.12.08 11:04

1960年代のアメリカで速さを競い、人気を二分した米英のスポーツカー。シンプルで手に届きやすい価格のコルベットと、ル・マン・レーサー譲りの容姿で高価だったEタイプ。アイコンと呼べる2台に、英国編集部が試乗しました。

想像以上に安心感のあるコーナリング

text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo:James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今回ご登場いただいたレイ・ルイスの1963年製シボレーコルベット C2には、3速MTのかわりにオプションのパワーグライドATがついている。ベースグレードとL75エンジンのモデルで選択できた装備だ。

1964年にはシンクロ付き4速MTが、すべてのC2で選べるようになっている。MTの感触は期待以上にしっかりしており、ゲートの手応えも良かった。ベースの254ps仕様でも驚くほどトルクは太く、変速が必要になる機会は少なかったが。

シボレー・コルベット C2スティングレー(1963年〜1967年)
シボレー・コルベット C2スティングレー(1963年〜1967年)

初代コルベットを運転したことがある人なら、C2でも初めてのコーナリングには緊張するだろう。しかし実際にカーブへ侵入すれば、安心感のある操舵感だと気づく。ステアリングホイールの遊びは初代よりずっと少なく、重みも増している。

コルベット C2には、より現代的なボール・ナット構造が採用されていた。ステアリングホイールのアームは細長い穴が開けられ、ロックトゥロックは3.4回転。レシオもクイックになっている。

このシルバーのコルベットの最高出力は、300psほどある。変速に悩む必要はない。期待通り、スティングレーは直線で最高の走りを披露。V8エンジンは力強く、どこまでも加速させていく。

アクセルペダルを踏み倒せば、爆発するようにスタートダッシュ。ローギアのまま、回転数の上昇とともに90km/h近くまでスピードを乗せる。

ストレートだけではない。コーナリング性能と、高いグリップ力にも関心する。まとまりは良いものの、上品さは今ひとつではある。

C2と比べるとコンパクトなEタイプ

路面状態で突然キャンバー角が変化し、振動とノイズがシャシーから響いてくる。時折クルマが、ボディとシャシーで分かれていると感じるほど。リアタイヤが、わずかにブレるような感覚もある。

剛性の高いクーペボディなら、コンバーチブルよりパフォーマンスははるかに優れる。もっと自信を持って、リアタイヤへ力を込められるはずだ。

ジャガーEタイプ S1 3.8/シボレー・コルベット C2スティングレー
ジャガーEタイプ S1 3.8/シボレー・コルベット C2スティングレー

前後の重量配分は48:52と優れ、挙動は予想しやすい。リアタイヤが絶えられなくなると、不安感なくスライドし始める。

コルベット C2は、1965年に4輪ともディスクブレーキを獲得する。しかし初期のドラムブレーキでも、1360kgを超えるスティングレーの車体を、力強く減速してくれた。

サンダー・マユガのジャガーEタイプへ乗り換えてみよう。ステアリングホイールはウッド。シートに座われば、前方には魚雷のように長いボンネットが伸びるが、そのコンパクトさを実感できる。

コルベットのように始動は簡単。アメリカンV8のサウンドへ応えるように、3.8Lの直列6気筒エンジンも素晴らしバリトンノイズを響かせる。

4速のモス製MTは、1速目にシンクロが備わらない。ゆっくりとした変速が求められる。慣れてくれば、操る不安も薄らいでいく。時間をかけて次のレシオを選ぶ。操作自体は楽しい。

シボレーのATも魅力的だったが、MTの操作がジャガーとの関わりを濃くし、運転へ惹き込まれる。パリッと乾いた排気音とトリプルSUキャブの吸気音が、カリフォルニアの空へ広がる。アクセルペダルを、思わず深く踏みたくなる。

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