【ストリートレースを彩った2台】シボレー・コルベット C2とジャガーEタイプ 後編

公開 : 2020.07.19 16:50  更新 : 2020.12.08 11:04

軽量なシャシーに空力特性に優れるボディ

気持ちに任せて右足へ力を込めると、パワーは上昇カーブを描くように湧き立つ。コルベットC2のように、静止状態からの迅速さはないものの、まったく違う加速を楽しめる。スミス製のメーターが、その活発さを教えてくれる。

軽量なボディが力強い加速を助け、優れた空気抵抗が高速域での安定性を担保する。アクセルオフでエグゾーストはぐずり、5000rpmを超えて気持ちよく吹け上がる。これほど優れたエンジンには、なかなかお目にかかれない。

ジャガーEタイプ S1 3.8(1961年〜1968年)
ジャガーEタイプ S1 3.8(1961年〜1968年)

ジャガーEタイプはパワーバンドが広い。パロス・ベルデスの丘に広がるカーブの続く道を、たくましいトルクで舐めていく。1963年同様、ジャガーEタイプを自分のものにするには、大金が必要なこともうなずける。

C2コルベットの方には、いつくかの現代的な改良が加えられている。シャープなラック・アンド・ピニオンのステアリングラックに、ケルシー・ヘイズ製サーボでブーストされる、ディスクブレーキ。

しかしシボレーが夢見るような能力を、ジャガーが秘めていることは、乗ればすぐにわかる。引き締められたサスペンションに強固なシャシー。ほぼ完璧なバランスを持つ、パッケージが備わっている。

強い日差しと、少なくなるガソリン。このEタイプが筆者のものではないという現実を気にしなければ、永遠に乗っていたいと思わせる。

ジャン&ディーンがデッドマンズ・カーブで歌った、サンセット・ブールバードのストリートレースは過去のもの。しかしコルベットもEタイプも、過ぎゆく時間を耐え、いまも走りは健在だった。

米英のアイコンと呼べるスポーツカー

ロサンゼルスのダウンタウンを流すなら、コルベットの方が良い。でも、よりお金を積んで、380psのフューエル・インジェクションに4速MTのC2を選びたい。今回の2台なら、Eタイプの方が有利だ。

軽いボディは、少ないパワーを補う。0-97km/h加速では0.5秒の差で、スティングレーを引き離せる。そのまま加速を続ければ、EタイプはC2より40km/h速い最高速度に届く。

ジャガーEタイプ S1 3.8/シボレー・コルベット C2スティングレー
ジャガーEタイプ S1 3.8/シボレー・コルベット C2スティングレー

直線速度だけではない。ジャガーはこれまでの自動車において、最も美しい姿をまとった1台でもある。ル・マン・レーサーのDタイプとの結びつきは明らかで、走行性能の高さは、見た目を裏切らない。

スティングレーは、キレの良いサーベルというよりも、大きなハンマー。スタイリングも、両車の性格を表すようだ。往年のレシプロ戦闘機、P-51マスタングとスピットファイアの違いのようでもある。

筆者にとって、ジャガーEタイプ S1の息を呑むようなスタイリングと、素晴らしい直列6気筒エンジン、スポーティなハンドリングという魅力は圧倒的。一方で、V8エンジンが奏でるサウンドを身体で楽しめる、コンバーチブルのシボレー・コルベット C2スティングレーも負けない色気がある。

シンプルで費用対効果に優れるシボレーと、モータースポーツ譲りの高価なジャガーは、別のアプローチを取ったといえる。しかし、どちらも着地点は近い位置にあった。今日まで生き残る、アイコンと呼べるスポーツカーが誕生したのだった。

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