【戦後のクーペ 4台乗り比べ】ランチア・アウレリア/アストン マーティンDB2/ACアシーカ/ブリストル404 前編

公開 : 2021.03.20 07:05

126psを獲得したDB2 ヴァンテージ

同時にブラウンは、モータースポーツが販売を伸ばすきっかけになると考えた。DB2発表の前年、複数台が1949年のル・マン24時間レースへ参戦。ラゴンダ製エンジンを載せた1台は6周目でリタイアしたが、DB2と2リッター・スポーツは完走している。

1950年には実力を高め再度参戦。翌1951年シーズンにかけて、優秀な成績を残した。今回ご紹介するDB2の最初のオーナー、ロドアルド・ミキャルクビッチの気持ちも刺激されたのだろう。1953年4月に自身のガレージへ収めている。

アストン マーティンDB2 ヴァンテージ(1950〜1953年)
アストン マーティンDB2 ヴァンテージ(1950〜1953年)

ミキャルクビッチのアストン マーティンDB2も、モータースポーツ志向が明らかに高い。RAC(ロイヤル・オートモビル・クラブラリーからプレスコット・ヒルクライムまで、多くのイベントへ参戦した記録が残っている。

ファイナルレシオを3.77:1から4.1:1へとクイックに変更し、DB2 ヴァンテージとしてアップグレードされており、最高出力126psを獲得。キャブレターを大型化し、専用ピストンで圧縮比も高めてある。

マン島TTレースを戦ったレーサー、ウィリアム・スコットなどがその後のオーナーとなり、さらなるアップグレードが行われた。専用のカムシャフトとクランクシャフトが与えられ、軽量化されたフライホイールとZF社製の5速MTが組んである。

より運転しやすく、信頼性も向上されている。エキュリーエコッセ・ブルーのボディがなんとも美しい。

美しさに溢れ手を触れるのがはばかれる

SUツインキャブの唸りと、シャープなアクセル・レスポンスは夢中にならずにいられない。エンジン内部まで強化されているから、ヴァンテージは通常のDB2よりさらに活発。アクセルペダルを踏み込めば、回転上昇とともにゴージャスな叫び声が響き渡る。

レザーが張り巡らされた車内には、アップライト気味のシートとウッドリムのステアリングホイールが付く。ジェームズ・ボンドとアストン マーティンとの結びつきを、BD2はすでに漂わせている。

ブリストル404(1953〜1956年)
ブリストル404(1953〜1956年)

タキシードを着こなすショーン・コネリーのように、ヴァンテージにも野暮ったい高級品のような雰囲気は感じられない。試乗を終え、DB2 ヴァンテージから降りるのが残念でならなかった。

今回のクーペ4台で、長距離クルーザーとしての性格付けが一番強いのは、ダークグリーンのブリストル404だろう。戦前の英国車のような、オールドファッションな洗練性と快適性を兼ね備えている。

車内には、時代を感じさせるレザーとウッドパネルのダッシュボード。そこに見やすいメーター類が整然と並ぶ。クラシカルな美しさに溢れ、手を触れるのがはばかれるほど。

しなやかなボディラインのACアシーカや、タイトなアストン マーティン、イタリアンなオシャレさの漂うランチア・アウレリアと比べても、ブリストル404のボディはソリッド。信じられないほど、良くできたクルマ感がある。

目がくらむような手間をかけて作られていることは、見るだけでもわかる。ところが404を新車で我が物にしたオーナーは、52名しかいなかった。

この続きは中編にて。

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