【欧州市場での強い存在感】フォルクスワーゲンID.4へ試乗 航続距離498km 可能性を表明

公開 : 2021.04.13 08:25  更新 : 2021.05.18 16:23

シンプルで特別なリラックスできる空間

試乗車の場合、5.2インチのモニター式となるメーターを包む白いプラスティックカウルも新鮮。まるで医療機器のように無味乾燥にも感じられる。メーターの横には、ギアセレクターが伸びている。

シートは見た目が良いだけでなく、座り心地も快適。ドアパネルには有機的なカーブが与えられている。シンプルなダッシュボードの造形と相まって、特別感ある雰囲気だ。実際に座ってみると、とてもリラックスできる空間だと思う。

フォルクワーゲンID.4 ファースト・エディション・プロ・パフォーマンス(英国仕様)
フォルクワーゲンID.4 ファースト・エディション・プロ・パフォーマンス(英国仕様)

グラスエリアが広く、前方視界に優れていることも影響しているだろう。でも、気になった部分もあった。

パワーウインドウのスイッチもなくタッチセンサーで操作するのだが、ドライバーが窓を開閉するには前後どちらの窓か選択する必要がある。なぜ、個別に4つのセンサーを設けなかったのだろうか。

ダッシュボードには間接照明が埋め込まれ、クルマの状態を光で教えてくれる。ナビやバッテリーの充電、電話の着信などの状況が、複数の色と点滅で表現される。役に立たないとはいわないが、正直少し気が散ってしまう。

とはいえ、全体的な人間工学の部分は優秀。リアシートは、期待を上回るほど足もとの空間が広い。メルセデス・ベンツEクラス並みだと思う。初めてとなる純EVのSUVで、フォルクスワーゲンはパッケージングのノウハウを獲得したと感じさせる。

そう関心しながらクルマを発進させてみる。運転の第一印象は、活気があるとはいえないものの、充分といったところ。魅力的とまでは思わなかったが、非常に直感的に操れる。

感覚的に運転できる電気自動車

ただし多くのドライバーは、強力な減速のワンペダル・ドライブに近いものか、惰性走行できるものか、どちらかの回生ブレーキの特性を好む傾向がある。ID.4の回生ブレーキには2つのモードがあるが、どちらでもない。

多くの電気自動車と同様に、ID.4もどこ家電のように感じる部分がある。一方で知覚される質感は高く、運転感覚は素直。淡白な中にも長所がある。

フォルクワーゲンID.4 ファースト・エディション・プロ・パフォーマンス(英国仕様)
フォルクワーゲンID.4 ファースト・エディション・プロ・パフォーマンス(英国仕様)

操縦系のレスポンスはしっかり調整されており、動的性能は立ち上がりからシャープ。走行中の熟成感も高い。デザインも未来的で興味深い。気持ちを温めてくれるだけの個性も感じられる。

試乗車は20インチのアルミホイールを履いていたが、滑らかに路面に追従し、マナーが良いという点もID.4の評価をさらに高める。シンプルで感覚的に運転できる電気自動車だ。

現時点の純EVを見渡すと、英国価格5万ポンド(750万円)以下まで範囲を広げても、ID.4ほど付き合いやすいモデルは見当たらない。広々とした車内を持つ控えめなクロスオーバーを、多くの人が好きになるだろう。

筆者が関心を寄せているのが、スコダが開発を進める純EVのエンヤック。スペックはID.4に近く、英国での価格は安いはず。ドライビング体験も、ID.4をシンプルにしたものになるだろう。

ID.4は、将来のフォルクワーゲンの可能性を表明している。ディーゼルエンジンのイザコザで萎縮した気持ちを、とき解くように。ドキドキした気持ちは、期待へと変わった。

フォルクワーゲンID.4 ファースト・エディション・プロ・パフォーマンス(英国仕様)のスペック

英国価格:3万7800ポンド(567万円)
全長:4584mm
全幅:1852mm
全高:1612mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:8.5秒
航続距離:498km
CO2排出量:−
車両重量:2124kg
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:82.0kWhリチウムイオン
最高出力:203ps
最大トルク:31.6kg-m
ギアボックス:−

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