【詳細データテスト】フォード・マスタング・マッハE 長い航続距離 遊べるシャシー 愛すべきEV

公開 : 2021.07.03 20:25  更新 : 2021.07.08 13:04

マスタングの名前とデザインを借りただけで、中身は代わり映えしないEVなのでは。そんな一縷の不安を抱いて臨んだテスター陣ですが、結果はクラスベストの評価に。そのツボは、EVに足りないハンドリングの遊べる余地です。

はじめに

騒ぎがひと段落し、われわれもようやく心の準備ができた。2020年のローンチとともに賛否の激しい論争を巻き起こした一台を、いよいよロードテストの俎上に載せようと思う。

アイデアそのものに問題はない。大多数のメーカーにとって、クロスオーバーSUVが利益を稼ぐ主力級のジャンルとなっていることは、いまや疑問を挟む余地すらないほど自明だ。ましてやそれを電動化したのは、劇的にCO2総排出量を下げるほどではないにせよ、罰金を課される危機に直面している企業としては当然の選択だ。

テスト車:フォード・マスタング・マッハE エクステンデッド・レンジ RWD
テスト車:フォードマスタング・マッハE エクステンデッド・レンジ RWD    OLGUN KORDAL

そうなれば、電動クロスオーバーというのは、実に理にかなったプロダクトだといえる。世界第4位の自動車メーカーたるフォードとしても、この手のモデルは是非ともほしかっただろう。

議論の種は、このフォード初のEV専用モデルが、マスタングを名乗ったことにある。ひとびとは、伝統のV8が電気モーターに取って代わられるのかと危惧したが、さすがにそんなことはなかった。少なくとも、今のところそうではない。とはいえ、歴史ある伝説的な名跡を利用しようという意図は明らかだ。

かつて日産が、スカイラインクロスオーバーというクルマを売ったが、あれも違和感があった。もしもポルシェが、マカンのEV版を911Eと名付けたらどうなるだろうか。さすがに評判がよくないのではないだろうか。

とはいえこのフォードの思惑は、結構うまくいきそうだ。マスタング・マッハEは、かなりの関心を集めている。それはスペックばかりでなく、スタイリングやポジションも理由だ。事実、今年のメキシコ工場でのマッハEの生産台数は、ここまでミシガン工場で造られた本家マスタングの数を上回っている。

大きなスケールでみれば、それほど大きな数字ではない。しかし、もしフォードが2030年までに総販売台数の40%をEVにするという目標を達成できたとしたら、この一歩は非常に大きな意味を持つものだったと振り返られることになるだろう。

もっとも、われわれがここで論じたいのは、そうしたフォードの未来の可能性についてではない。その車名に囚われることもなく、マッハEそのものがどのようなクルマであるのかを解き明かしたいだけだ。フォード初の市販EV専用モデルは、賞賛するに値する出来栄えなのだろうか。

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