【買えないなら作っちゃえ】ティレルP34 伝説の6輪F1が蘇る レース愛好家が精巧に再現

公開 : 2021.10.30 06:25  更新 : 2021.10.31 18:18

P34で戦ったF1ドライバーに聞く

南アフリカ人のF1ドライバー、ジョディ・シェクターは当時、6輪のティレルP34にはあまり興味がなかったという。その理由を語ってくれた。

――デザイナーのデレク・ガードナーから計画を聞いたとき、どう思いましたか?

ジョディ・シェクター(左)とジャッキー・スチュワート(右)
ジョディ・シェクター(左)とジャッキー・スチュワート(右)

「うーん……。まあ、しばらくはわたしに隠していましたけどね。最初に知ったのはいつだったか覚えていません。わたしにはあまり意味のないことでしたが、続けていくうちにやはり意味のないことになってしまいました」

――前面の面積が小さいのは、空気抵抗を減らすためだったんですよね?

「その通りです。わたしは空力の専門家ではありませんが、後ろは同じ大きさのままでした。少しは効率が良くなったのでしょうか?可能性はありますが、そうではないかもしれません」

「ブレーキの効きが格段に良くなったと言われていますが、理論的にはその通りでしょう。道が平坦で真っ直ぐなときはそれでいい。しかし、コーナーを曲がった途端、小さな車輪の片方が持ち上がるため、ブレーキから足を離さなければなりません。優位性がないのです」

――最初から疑問を持っていたのですね。

「そうですね。テストのとき、チームは実際にそうであるかどうかにかかわらず、優れていることを証明しようとしました。でも、運転していて楽しかったですよ。何でもできます」

――ですが、成功したのではないでしょうか?

「実際のところ、わたしが覚えていた以上に成功しています。数年前に見たときには気がつきませんでした。スウェーデンGPで勝ったことはわかっていましたが、よく壊れました。ザントフォールトに行ったときも、ずっと『壊れるんじゃないか』と不安でしたよ」

「オーストリアでは前輪の片方が壊れて大クラッシュ。スウェーデンでの練習走行では、片方のホイールが外れてしまいました。あまりにもたわむので、アライメントやキャンバーをほとんど毎回リセットしなければなりませんでした」

――スウェーデンで失ったホイールについては、面白い話がありますよね?

「わたしがコースから戻ってきて、ピットにマシンを停めたときのことです。デレクがマシンの上に座り、『ハンドリングはどうだ』と聞いてきました。わたしは『ちょっとアンダーステアだね』と言って、笑いました。彼はホイールがなくなっていることに気づいていなかったんですよ。メカニックたちは、誰かがそれを外したと思っていたんです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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