【F1エンジンの課題解決か】メルセデスAMG 新型「ワン」の生産を来年開始予定 3億円のハイパーカー

公開 : 2021.10.15 18:25

これまで延期されてきた新型メルセデスAMGワンの生産が、来年半ばに開始されることが明らかになりました。

ついに生産開始時期が決定

執筆:James Attwood(ジェームズ・アトウッド)
翻訳:Takuya Hayashi(林 汰久也)

メルセデスAMGの新型ハイパーカー「ワン(One)」が、来年の半ば頃に生産を開始することが発表された。

AMGは、F1由来の1000ps超のパワートレインを積む新型ワンを注文した顧客に対し、275台の製造が2022年に開始されると通知した。これまでの一連の延期を経て、ようやくプロジェクトが実現することになった。

メルセデスAMGワン
メルセデスAMGワン

プロジェクト・ワンのコンセプトが発表されたのは4年前だが、F1由来のハイブリッド・パワートレインを公道用に適合させるための複雑な作業が原因で、開発が遅れたと言われている。しかし、AMGはその問題の解決に努め、今年初めには公道でのテスト走行が目撃されたほか、先月開催されたミュンヘン・モーターショーでもお披露目されている。

新型ワンは、ハイブリッド技術と電動化技術をアピールすることを目的とした、大きな期待が寄せられているハイパーカーだ。先に公開された公式ビデオでは、テストコースを疾走する姿が映し出されており、エアロパーツやキャビンデザインが詳しく紹介されている。

また、メルセデスAMG最新のF1マシンと同様に、ワンにも「Eパフォーマンス」という新しい名称が採用されたことも明らかになった。この名称は、これまでの「EQパワー+」に代わる、同ブランドのハイパフォーマンス・ハイブリッド車共通のものだ。

F1エンジンの調整に難題

ワンは、2017年のF1マシンに搭載されていた1.6L V6をハイブリッド化して搭載し、最高出力1000ps以上を発揮する全輪駆動モデルだ。当初は2019年初頭に発売される予定だったが、複雑なパワートレインの性能を損なうことなく、ガソリン・パティキュレート・フィルターを使用したWLTP排出ガス基準に適合させることなど、技術的な問題が発生したため、発売時期が延期された。

また、約5000rpmというアイドル回転数にも課題があった。エンジニアは、約1200rpmのアイドル回転数でエンジンを正常に動作させることを目標とし、「非常に大きな挑戦」と述べていた。

メルセデスAMGワンのプロトタイプ
メルセデスAMGワンのプロトタイプ

開発目標は、「日常的なパフォーマンスにおいて完璧な性能を発揮する」ことと、「最長25kmのEV走行を実現する」こと。最高速度350km/h、0-200km/hを6秒で達成するというコンセプトの性能を達成できるかどうかはまだわからない。

チューニングが完了すれば、ニュルブルクリンクでなんらかのラップレコードに挑戦することになるだろう。

デザイン面では、コンセプトカーで見られた要素を多く継承している。空力性能を重視し、テスト走行ではルーバー、フロントウイングのエアアウトレット、リアスポイラーなどの可動式エアロパーツの調整に重点が置かれている。生産前に再び変更される可能性もある。

仕様の詳細はまだ明らかになっていないが、顧客には2021年中に納車される予定であることが伝えられている。生産台数はわずか275台で、そのすべてが227万ユーロ(約3億円)の価格ですでに販売されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×