アウディR8/RS6アバント/eトロンGT試乗 速いアウディ乗り比べ それぞれの方法論

公開 : 2021.12.08 05:45  更新 : 2021.12.09 10:47

富士スピードウェイでアウディR8/RS6アバント/eトロンGTに試乗。最新の「速いアウディ」を解説します。

R8は究極 速いアウディの存在価値

アウディR8クーペとRS6アバント、そしてアウディ最新のBEVであるeトロンGTを富士スピードウェイで試すことができた。

いちおうペースカーが先導してくれるが、ストレートエンドにおける最高速は全開でいった時の10km/h落ち程度。

アウディR8クーペ
アウディR8クーペ    山本佳吾

つまりなかなかのペースだったということだ。

サーキット試乗では、普段公道での試乗では体験できないスピード域を試せるというメリットがある。もしオーナーがそういったスピード域と縁がなかったとしても、速いアウディの存在価値としては大切なことだ。

現行のR8クーペは2016年デビュー。V10エンジンは620psを発生している。

とはいえそのドライブフィールは「冷静なスーパーカー」らしい落ち着きを払ったものだった。

2年前にやはり富士でR8を試乗したときにはあらゆるコーナーでスタビリティコントロールがしつこく介入し、遊ばせてくれないイメージがあった。

ところが今回の最新モデルはシャシーの側が煮詰められ、電制もはるかに控えめになっていた。

しかもホームストレートでは260km/hオーバーで走りながら、安心感さえある。

公道では感じ取ることが難しいであろう限界付近の差異ではあるが、アウディがプライドを賭けて生み出すパフォーマンスモデルの熟成のされ方としては理想的だと思う。

RS6アバント 直線番長に非ず

サーキットを走るステーションワゴンというと妙な感じだが、RS6アバントなら話は別。

富士のホームストレートで目を吊り上げたブラックバスのような表情のアウディにぶち抜かれ、そのテール形状がワゴンだったとしても、諦めがつくはずだ。

アウディRS6アバント
アウディRS6アバント    山本佳吾

並のクルマが空気の壁に当たってスピードが伸び悩んでいるような領域でも、RS6はブレーキングポイントに向けてモリモリと加速し続けている。

600psを発揮する4L V8ターボで四輪を駆動させる。

相対的な話をすれば、クワトロ(四駆)のアウディは曲がりたがるクルマではない。

つまり直線のスタビリティが図抜けて高いわけで、じゃあコーナリングをテクノロジーでどう解決するか? というのが彼らのテーマでもある。

速いアウディで富士を走ると「走行ラインを選べないな」と感じることも少なくない。

といっても難しい話ではなく、慎重にアウト側からコーナーに入り丁寧にステアリングを切り込めば、あとはスロットル全開で抜けられるのだが、レールに乗せられている感覚もある。

その点RS6アバントは少しタイトなラインからでもすんなりと曲がってくれた。

電制ブレーキでコーナリング養成ギブス的に曲がるのではなく、ミドシップみたいにすっきりと旋回する。

後輪操舵がアンダーステアを絶妙に消し去ってくれているのだ。

以前、公道で試した時には「直線番長」というだけでも充分に満足できたが、実はそれだけじゃない。

アウディらしい個性で満たされた、これは傑作だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

関連テーマ

おすすめ記事